EC消費変化を商機に
経済産業省の調査によると、昨年度の国内EC市場における物販系BtоCの売上規模は前年度比21・7%増の12・2兆円と大幅な伸びを示した。2013年度の同市場規模が約6兆円であり7年間で倍増となった。
仮に新型コロナ感染症の影響がなく、この数年の1ケタ台後半伸長率の延長線でとらえれば、昨年度は最大でも11 兆円と推測する。巣ごもり消費がBtоC物販系の市場規模を少なくとも約1・2兆円底上げしたことになる。
国土交通省によると、昨年度の宅配便取扱個数は前年度比11・9%増と2ケタ伸長を示しておりこの底上げ分を確実に取り込んだ格好だ。
EC市場も旅行・飲食サービスやチケット販売などは大きな打撃を受けた。同調査によるとサービス系分野は36・1%減と落ち込んだ。一方で、オンラインゲームや動画・音楽配信などデジタル系分野は14・9%増と伸び、トータルでは物販・デジタルの拡大がサービス系の落ち込みと相殺されBtоC全体では前年のほぼ横ばいだった。
また、企業間のBtоB市場規模は5・1%減と調査開始以降初の前年割れ。やはりコロナ禍の経済活動の低下を受けたが、EC化率は増加傾向で商取引の電子化が進展していることが伺える。
BtоC市場はコロナを契機にさらに需要拡大が見込まれる。ヤマト運輸は今年度の宅配便取扱個数計画を前年比2億個増の23億個とするが、4-6月は大幅に伸びた前年(17・1%増)に対しさらに9・8%伸ばした。
巣ごもり消費もある程度定着化してきた。在宅長時間化による消費スタイルの変化、多様化に対し、様ざまな業種・業界が新たな商機をつかもうとしている。
名古屋市の商業施設「mоzоワンダーシティ」はこのほど店頭在庫型EC事業を始めた。施設内複数ショップの商品をオンラインで注文できるもの。実店舗もその役割を発揮しながら販路を広げる。館内物流を受託しているワールドサプライが一括して業務を担う。
EC市場の物量拡大とともに消費変化を受けた新たな物流サービスの創出にも目を向けたい。
EC市場の拡大は宅配再配達など人手不足や「送料無料」表示などの問題も抱える。配送は当り前との印象を与えるのは避けたいが、社会的関心が高まるEC市場に物流がしっかり対応することが、消費者の正しい理解を得られる近道になる。