ワースト1の汚名返上へ
トラック運送業の過労死等認定件数が、依然として業種別ワースト1であることが厚生労働省の2017年度「過労死等の労災補償状況」で明らかになった。
いわゆる「過労死等の認定件数」は、過労など脳・心臓疾患に関する認定件数だったが、2013年11月に施行された過労死防止法により、うつ病など精神障害を含め、死に至らないケースを含めて「過労死等」と定義された。つまり、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患のほか、仕事による強いストレスなどが原因で発症した精神障害も「過労死等」になる。
17年度の脳・心臓疾患による労災認定件数を業種別でみると、トラック運送業は前年度の89件から85件と4件減ったが、2位飲食店の19件に大きな差をつけてダントツだ。業種別の統計を開始した09年度以降9年連続ワースト1である。
また、17年度の精神障害による労災認定件数もトラック運送業は45件(前年度ワースト4/26件)と大幅に増加し、2年ぶりにワースト1となった。2位は社会保険・社会福祉・介護事業(前年度ワースト1/46件)と医療業(同ワースト2/32件)の41件だ。
脳・心臓疾患による認定を含め、トラック運送業がワースト1となっている背景に、長時間労働が原因になっていることが指摘されている。
国土交通、厚生労働両省は2015年5月、トラック取引環境・労働時間改善協議会を立ち上げ、長い間放置されてきたトラック運送業の長時間労働改善に着手した。各都道府県に地方協議会も設け、全国的に取り組みを進めている。
だが、現状は関係者の真摯な取り組みにもかかわらず、依然として「過労死等ワースト1」の汚名を返上できずにいる。
なぜ、長時間労働を改善できないでいるのか。業界内には、深刻な労働力、ドライバー不足をあげるほか、長時間労働を前提とした賃金体系を採用する企業が多いため、労働時間短縮が賃金の減少につながる点をあげる声が少なくない。
全日本トラック協会の坂本克己会長は総会や理事会で「良質な労働力の確保、現場での安心安全な労働環境の整備、賃金など労働条件の改善に取り組むには、適正運賃・料金収受で原資を確保することが必要だ」と話す。
業界は、原資確保のために運賃交渉を進める必要がある。
労働時間短縮が賃金に影響しない、安心して働ける業界づくりを通じて、「過労死等ワースト1の汚名返上」ができるよう期待したい。