グループ総合力で価値創出
日本通運、ヤマトホールディングス、SGホールディングス、日立物流の陸運大手4社の2019年3月期連結決算は、厳しい経営環境の中、4社とも増収増益を達成した。
売上高では日本通運が2兆円を突破し4社合計で5兆5907億円(前期比5・9%増)。中間期での4社予想合計5兆5400億円(4・9%増)を上回った。利益面でもヤマトHDが大幅に改善し、4社合計で営業利益2395億円(20・7%増)、経常利益2500億円(20・5%増)とほぼ中間期の予想通り着地した。
2兆円を達成した日本通運は堅調な荷動きを背景に各セグメントで増収。利用運送費や外注費の増加、燃油費の上昇、自然災害の影響もあったが、売上高の増加により2ケタ増益だった。
全体でも適正運賃収受による単価上昇が増収に大きく寄与した。ヤマトHDはデリバリー事業の構造改革で宅急便取扱量が減少したものの、宅急便単価は702円(前期比14・1%増)に上昇。SGホールディングスは継続的な適正運賃収受の取り組みで、平均単価が613円(11・5%増)となった。
一方で今期(20年3月期)業績予想は慎重な見通しを立てる。中国経済の減速をはじめ国内外景況は先行き不透明である。燃料費の高騰に、労働力不足への対応も経営に重くのしかかる。原油価格動向や為替変動リスクなどが懸念される。ヤマトHDが2ケタ増益を見込むほかは増収増益も小幅だ。
4社合計の今期予想は売上高で前期比2%増の5兆7000億円、営業利益は1・5%増、経常利益は1・9%増にとどまる。
SGHが策定した今期からの新中期経営計画では、平均単価は今期636円に上昇するも、最終年度は638円と微増の見通しだ。施策面ではグループ総合力による物流ソリューションの進化を重点の1つに置き、先進的ロジスティクスチーム「GOAL」による領域拡大や、日立物流との協創プロジェクトの活動を強化する。
日立物流も今期から新たな中期経営計画を進めるが、19年度は強固なコア領域(スマートロジスティクス領域)構築へのポートフォリオ戦略実行を重点に掲げる。減収見通しの中には戦略実行による事業撤退も織り込んでいる。
厳しい経営環境下での持続的成長に向け、各社ともグループ総合力による経営資源の価値増大に注力する。コア領域の深堀り、高付加価値サービスの創出に期待がかかる。