次代を描ける 魅力あふれる業界に
2020年の幕が開けた。
改正貨物自動車運送事業法の施行がトラック運送業界の働き方改革を強く後押しする。業界の健全な発展、進化を展望したい。
昨年12月には自動車運転者の改善基準告示見直しに向けた専門委員会が立ち上がった。現場の業務特性を反映し、丁寧な議論で新たな時代にふさわしい内容としたい。
全日本トラック協会の坂本克己会長は、改正事業法の重要項目において、規制の適正化、荷主対策の深度化、標準的な運賃の告示制度の導入が〝3点セット〟となることで目標が達成されると主張する。「真面目な事業者がしっかりと世の中から評価される。現場のドライバーが暮らしの豊かさに満足し、仕事に自信と誇りを持てるようにしたい」と新たな年を見据える。
標準的な運賃の告示制度は年度内導入へ作業が進められている。国の基本的な考えは、実運送を対象に、人件費は全産業の平均並みととらえる。荷主にも説得力のあるものが望まれる。
荷主側も物流の人手不足は自らの事業継続の危機でもある。
赤羽一嘉国交相は新春インタビューで、「物流の生産性向上には荷主が協力というよりも、我が事のようにとらえる必要がある」「人手不足は我が国全体の問題。物流が立ち行かなくなれば荷主の成長はありえない」と指摘する。まさにサプライチェーン全体で物流改善に臨む気運にある。
昨年動き出した「ホワイト物流」推進運動がさらに大きな流れとして全体最適化を促す。そして、こうしたムーブメントが末端の消費者にも物流に対する正しい理解につながるものと期待したい。
物流効率化法による貨客混載や、業種業態の枠を超えた事例も広がる。環境負荷低減と生産性向上の効果を横展開し、これら事例を積むことでより消費者に効果的に伝わる。宅配便の再配達、引越分散化、食品ロス削減と消費者の意識変化によって物流危機が回避されるところも大きい。
オリンピックイヤーとなりその景気浮揚が聞かれる一方、米中貿易摩擦など荷動き影響への懸念は拭いきれない。とりわけ製造業の景況感は不透明だ。燃料価格はピークから下がったものの、働き方改革への対応、コンプライアンス強化など経費負担増が経営を圧迫する状況は続いている。
それでもサプライチェーン全体の物流改善の動きは加速するだろう。あらためてトラック運送業界は適正運賃収受を着実に進め、より強い基盤づくりを進めたい。
忘れてはならないのが災害対策である。昨年の台風・豪雨による被災地には多くのトラック運送事業者が救援物資輸送を担った。一方で多発する自然災害に対応したBCP(事業継続計画)や人材育成も求められる。自然災害は常態化との認識を強く持ち、重要インフラとしての使命・役割を今一度考えた体制整備が健全な産業発展へ不可欠である。
来年度予算では、トラック運送事業の働き方改革推進への措置が継続されるほか、物流生産性向上への支援が拡充された。先進技術による物流革命は目覚ましい。自動運転、MaaSの物流への活用、さらにスマート物流サービスによる新たな価値創出の方向性もより鮮明になってくる。
働き方改革によりドライバーの労働環境を改善し、もう一段の生産性向上への取り組みが期待される。
さらに魅力あふれる業界へと、確かな一歩を踏み出そう。