総力戦で物流改善
国土交通省は今年度の輸送品目別取り組み強化事業で、「飲料・酒」「生鮮食品」について課題整理、改善策を検討する。来年度予算概算要求でもこれら労働条件改善への施策を盛り込んでおり、取り組みを深化させたい。
自動車局の来年度概算要求ではコロナや自然災害も踏まえ「危機時等に備えた体制強化・新サービスの構築」を柱の1つに置き、トラック運送業働き方改革の措置はこの中に入る。長時間労働是正への施策も持続可能な物流へ不可欠である。
品目別の課題検証では、荷待ち件数の多い加工食品、建設資材、紙パルプで、荷主が参画した懇談会を通じ5月にガイドラインを公表した。省庁連携により荷主団体や傘下企業への周知を進めているところだ。
同時に他の品目も検討に入り、18日には飲料・酒の改善策を検討する懇談会が発足。東京都地方協議会との合同で行い、5つの実証実験を行うことなどを確認した。先行の3品目も、指針で示した方向性に沿い、課題解決の方策を検討・検証するとしており、継続性ある施策が望まれる。
飲料・酒の検討は加工食品懇談会の分科会として立ち上げた。課題解決のプロセスなどとくに卸-小売り間では加工食品の荷待ち時間削減の考えと共通する点もある。ここをベースに議論を深掘りすることでより実効性のある方策が期待される。
18日の会合では冒頭に伊地知英己貨物課長が、2024年4月からの時間外規制の適用を踏まえ「上限規制を遵守しながら今と同水準の物流を確保するのは困難」とし、長時間労働是正に向けた実効性ある取り組みが急務と呼び掛けた。
東京都協議会との合同会議で進めるが、東京もオリパラを控え、夏季の飲料・酒の需要増と重なることから物流改善は喫緊の課題だ。「ドライバー不足は深刻化し、このままでは経済、社会を支える物流維持が懸念」(伊藤義久東京運輸支局長)され、ワーキンググループを発足し分科会と協力して実証を進める。まさに総力戦で物流改善に臨む。
合同会議の座長を務める矢野裕児流通経済大学教授は「これまでの品目別の検討により、それぞれの立場でどう解決すべきか相当見えてきた」との感触を示す。
製配販の各プレーヤーが「ものが運べなくなる」危機感を共有しながら課題解決を見出す場を、各品目の現場に近いところに落とし込む。それぞれの継続性、深化とともに品目も広げる水平展開で取り組みの浸透を促したい。