〝見える化〟正面から向き合う
荷待ち件数の多い輸送品目別による懇談会で、今年度は飲料・酒物流の実証実験が行われ、様ざまな方策からトラックドライバーの労働時間を短縮できることが確認できた。
これまで、加工食品、建設資材、紙・パルプの懇談会が設けられ、実証実験、検討を重ね昨年5月にそれぞれ取引環境と労働時間改善に向けたガイドライン(指針)を公表した。今年度の飲料・酒は加工食品の分科会として、5つの実証実験を行い2月24日の会合で結果を報告した。年度内にも加工食品の指針を改訂する形で盛り込む考えであり広く周知させたい。
実証ではノー検品や年月日表記から年月表記への切り替え、先出先入など附帯作業の見える化、車両の共同活用による各効果を推測した。附帯作業では小売り・料飲店関係への配送で1時間超の事例もあるなど大きな作業負担・時間が発生していることが分かった。
トラックドライバーは時間外労働の罰則付き上限規制が2024年4月から適用されるが、現状のままでは上限規制を遵守しながら現在と同水準の物流を確保することは困難とされる。こうした観点からもこの附帯作業の時間は大きい。
実証実験の報告では附帯作業に関して「〝標準的な運賃〟の待機時間料を上回る規模の料金が妥当」(自販機)、「必要に応じて附帯作業に係る取り決めを明文化する」(小売り・料飲店)などあり方も示しており、何らかの働きかけが必要だ。
懇談会では飲料メーカーの委員から「附帯作業の話はなかなか民間ベースでは進まず、行政がロードマップなどを示してほしい」との声も聞かれた。現実には商習慣やパワーバランスもあり一気には進まない。まず、関係者間でしっかりと〝見える化〟することで荷主間、運送事業者含め関係者がこの問題に正面から向き合ってほしい。
加工食品業界はこの1、2年で物流改善への動きが大きく前進した。国土交通省が昨年3月に策定した標準化アクションプランに沿い、外装サイズ標準化への動きが進捗する。DX(デジタルトランスフォーメーション)とその前提である標準化が進めばドライバーの労働環境改善に繋がる。製配販の各プレーヤーが、ドライバーの労働環境が改善しなければ〝ものが運べない〟という強い危機意識の共有がこうした動きの根源にある。
長時間労働是正への施策は持続可能な物流へ不可欠である。指針の周知はいわばスタートラインであり、さらに自発的な取り組みを促したい。