「適正運賃収受」を粘り強く
コロナ禍で物流現場の人手不足は一時緩和されたようだが、物量の回復に伴い再び不足感が聞かれる。少子高齢化が続き、先行き人材確保へ課題は山積する。
国土交通省が行った港湾労働者不足に関する実態調査によると、55%の事業者で労働者が不足し、 41%が港湾運送への影響が生じていると回答した。さらに2025年の見通しでは63%が不足と回答している。トラックドライバーの人手不足も深刻化する中で、物流を止めないためにも抜本的な対策が求められる。
物流現場は依然として厳しい労働環境イメージがあり、企業の求人活動に影響を与える。この実態調査からも港湾労働の現場への就職が人気のない理由として、事業者の7割が「労働環境(暑さ・寒さ等)が厳しい」、5割が「土日祝日勤務がある」、「魅力的な職種と思われていない」と回答している。
一方、人手不足であっても「将来の業務量の見通しが不透明で採用が困難」、「波動性が高く繁忙期に見合う人員確保はコスト面でリスクがある」といった取り巻く事業環境から積極的に採用に動けない側面もある。
取引先には「適正料金収受の必要を理解してほしい」との意見の一方、「取引先の料金値上げは逆に仕事を失う恐れがある」などトラック運送業と同様な実情が伺える。労働環境の改善と同時に取引適正化をさらに推し進める必要がある。
行政に対しても「トラックのような適正価格の後押し」をあげる声が聞かれる。労働力確保のコストアップを適正運賃収受で補う。トラックも「標準的な運賃」の実効性を高め、その成功事例を広く示したいところだ。
自動車運送事業者の労働環境改善に向けては「働きやすい職場認証制度」の初年度認証事業者が公表された。2558社(トラック1726社)の申請があり、2548社(同1718社)が合格し「一つ星」の認証を受けた。全事業者の割合からすると、まだまだこれから。制度の認知度向上へ業界内外への発信力強化とインセンティブの拡充が望まれる。
事業者の取り組みを〝見える化〟することで求職者のイメージ刷新を図るというこの制度の拡充により、認証取得へ事業者が労働環境を改善する好循環が期待される。企業の自助努力とともに業界全体の地位向上、イメージアップへの施策の連動が有効だ。
そのためにもトラック運送業は適正運賃収受への取り組みを粘り強く進めなければならない。