利用実態を広く共有
6月に発足した「官民物流標準化検討会」の分科会としてパレット標準化推進の議論がスタートした。サプライチェーン各段階で物流危機への共通認識を持つが、担い手不足に「2024年問題」も迫っており、スピード感が求められる。
2024年4月からトラックドライバーに時間外労働の上限規制が適用され、働き方改革に取引適正化、そして物流効率化への取り組みも待ったなしの状況だ。物流事業者だけでなく、関係荷主業界に行政も含め一体となった連携がなくてはならない。
物流効率化については、6月に閣議決定した新たな総合物流施策大綱において、DX(デジタルトランスフォーメーション)と、その実現に向けた標準化が大きな柱に掲げられた。「DX実現70%」など数値目標をしっかりとフォローアップする体制である。物流を支えるパレットの標準化が全体の効率化を加速化するものとして重点的に取り組む考えだ。
分科会では実態調査に、サイズ・仕様など規格と運用方法の標準化を取りまとめる第一段階と、具体的な推進方策を定める第二段階で議論を進め、最終的には大綱(5カ年)内で方策を示す。必要に応じて中間とりまとめも行う考え。とくに実態調査は物流、荷主事業者それぞれ幅広く行うもので、得られた情報を広く共有し、現場にもできるところから活用できる柔軟な対応が望まれる。
実態調査では利用実態のほか、労働環境や生産性・積載率・回転率に、CО2削減など社会的効果や、買い替え、規格変更によるサプライチェーン上の設備投資コスト試算なども盛り込む考えで、メリットを分かりやすく示してほしい。
7日に行われた初会合では日本パレット協会の加納尚美会長が標準化の現状と課題を説明したが、パレットサイズ(規格)の標準化に、標準化されたパレットを社会で共有するルールや組織・制度の設計が両輪の関係であることを要点にあげる。
物流標準化は古くて新しい課題だが、物流を止めない危機感だけでなく、ニューノーマル、カーボンニュートラルやSDGsといった大きな社会変化への対応も求められる。これまでとは違う事業環境であるのは確かだ。
官民物流標準化検討会においても「時機を逸せず集中的に標準化を推進する」としており、長年にわたり指摘されてきたパレット標準化を一気に推し進めるよう根本的な課題から掘り下げた議論が期待される。