原燃料高騰が深刻な打撃
原油が7年ぶりの高値水準となり各方面に影響を及ぼす。トラック運送業界は中小零細企業が多く、軽油の高騰は直接的に経営を圧迫する。
軽油店頭価格は10月25日時点で1㍑あたり前週比2・7円高の147・1円。年初117円が3月下旬に130円台をつけ高止まりからさらに上昇、この4週では8・4円の値上がりである。
緊急事態宣言等措置の解除、感染拡大の減少傾向の好材料も、足元の原燃料高に半導体など部品不足が景気回復にブレーキをかける。
全国中央会の9月の中小企業月次景況調査によると、運輸業の収益状況指数は5ポイント下げ3月以来の低水準。販売価格指数がプラスに転じるなど、原燃料高騰分の販売価格転嫁も一部進展しているが、資金繰り指数が悪化している。コロナ禍の影響よりも、原燃料高の行方を不安視する事業者の声が増えている。
メーカーの製品値上げ表明も相次ぐ。自社の合理化・省力化、採算改善に努めるも、原燃料上昇が続き、安定供給、設備の維持へ値上げに踏み切る。電力コストも上昇し、物流コストへの影響も懸念される。
今月上旬の産油国会合での判断によるが、先行き不透明感は拭えない。この状況下で企業はさらなるコスト合理化に迫られる。
トラック運送業は国の支援も得ながら適正運賃収受への取り組みを進めている。荷主も厳しい環境に置かれるが、物流維持、雇用確保へあらためて理解・協力を促す必要がある。
斉藤鉄夫国交大臣は10月26日の閣議後会見で「物流・交通分野に支障が生じないよう関係省庁と連携して必要な対応を行う」とし「例えば燃料サーチャージ制度の趣旨の周知・理解を幅広く求めていくことも対応したい」との見解を述べている。
岸田内閣が新しい資本主義実現本部を設置し、ビジョンの具体化を進めるための会議を立ち上げた。「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトに掲げる。
示した論点の中には、「分配」を稼ぎ出す「成長」において、コストカット重視の経営から付加価値創造型を促し、次の「成長」につなげる「分配」では中小・下請け企業への配慮を記している。
中小・下請け企業には様ざまなリスクのしわ寄せがくる。自助努力では解決できない外的リスクが成長の大きな壁にならないよう環境整備が求められる。