適正運賃収受で難局打破
物流企業の4-9月期決算は前年のコロナ影響の反動もあり多くが増収増益だった。本紙調査によると、80社のうち前年同期比2ケタ増収が39社、営業利益2ケタ増益が50社と半数を超えた。
コロナ前の業績を上回る企業も多い。売上上位20社でみると12社が売上高と営業利益で、15社が営業利益でそれぞれ一昨年実績を上回る。海上コンテナや航空スペース不足による運賃高騰、国内ではEC拡大など需要増を取り込んだ。生産性向上、コスト適正化の施策で利益の大幅な伸長も目につく。
海上・航空運賃の高止まりは下期も継続する見通しで、EC市場も裾野の広がりを見せる。上位20社では11社が売上高・営業利益を上方修正した。
近鉄エクスプレスの鳥居伸年社長はスペース供給量不足という「異常な状態はあと2年続く」と見る。売り上げでは1000億円超の上方修正も相次いだが、それだけ先行き見極めが困難な状況が続く。物量は緊急事態宣言解除後の景気回復が追い風だが、下振れリスクを注視し経営判断は一段と難しい局面にあるといえる。上期に上振れた企業も前回予想を据え置く慎重な姿勢が伺える。
足元の原油高騰、材料不足・値上がりの行方が気がかりだ。上期業績も7-9月ではコロナ影響の反動増や収益改善策の一巡もあり、4-9月より伸び率が鈍化する企業もみられる。コスト適正化による利益拡大も一定水準で限界がある。
トラック運送業界の7-9月景況感(全日本トラック協会まとめ)では、貨物輸送量が改善基調も燃料価格上昇が収益を圧迫し、判断指数は4-6月より悪化、10-12月予想は改善も小幅にとどまる。
国土交通省のコロナ影響調査からも10月の運送収入が2年前より2割以上減少した事業者の割合が9月に続き13%と依然として高い。「影響なし・増加」の割合も31%と9月(39%)より減少した。3割以上減少が10%と扱い品目で開きがあり、鉄鋼厚板や完成自動車など2ケタ減が続く。
燃料高騰では全ト協の要望に対し国交省が即応して通達を発出した。荷主に燃料上昇分を反映した適正運賃・料金見直しの要請へ周知を図る。
中小零細が多くを占めるトラック運送業は足元の燃料高騰が喫緊課題である。まず、エッセンシャル事業者がしっかり機能しなければこの難局は打破できないことを、サプライチェーン全体でしっかり共有する必要がある。