中小も〝正常化〟追い風に
全日本トラック協会によると、国の燃料高騰対策が奏功し、7-9月期のトラック運送業界の景況感判断指数は4-6月期より15・5ポイント改善した。しかし10-12月期は1・5ポイントの減少見通し。燃料価格の高止まりに資材高など一連のコスト高の事業環境が継続することを織り込む。全ト協の景況感調査では、7-9月期の判断指数はマイナス36・6。「好転」とした事業者が17・7%に対し、「悪化」とした事業者が46.0%と依然多数を占める。指数はコロナ禍で2020年4-6月期にマイナス112・5まで落ち込み、21年10-12月期にはマイナス21・0まで戻したが、深刻化するコスト高影響で停滞が続く。
過去10年でプラスに浮上したのは2013年10-12月期の12、14年1-3月期の14、17年10-12月期の2・2の3期のみ。この5年はマイナスから脱していない。
10-12月期予想では、一般、宅配、特積貨物とも輸送数量、運賃・料金は改善する。年末年始は需要拡大が見込まれ、同調査も例年10-12月期は上向くが、それでも全体の判断指数は減少見通しだ。
倒産件数も増えている。2024年問題への対応も急務である中、「構造的に価格転嫁が進まず過剰債務で経営不振に陥る企業を中心に倒産件数をさらに押し上げる可能性が高まっている」(東京商工リサーチ)。
上場物流企業の上期決算では、9割超が2ケタ増収と物量は確実に回復、コロナ前を凌ぐ過去最高収益の更新も相次ぐ。しかし海運などを除き通期予想は慎重だ。燃料高騰、電力コスト負担が重くのしかかる。それでも大手各社は生産性向上、コスト調整、さらに経済・社会活動の正常化から新規投資や事業拡大の売上増で利益確保を図っている。
政府の新たな総合経済対策では、激変緩和措置や、中小企業が労務費、原材料費、エネルギーなどコスト上昇分の適切な価格転嫁に向けた措置を引き続き強力に進める。さらに賃上げの原資となる付加価値の増大へ、中小企業のデジタル、グリーンなど事業環境変化への対応を後押しするとしている。
足元のコスト増はとりわけ小規模事業者の経営を直撃する。その先行き不透明感が経営マインドを大きく下げている。
燃料高対策、価格転嫁・適正化施策もそう円滑には進まない。何より即効性ある施策が望まれるが、〝正常化〟を中小・小規模事業者にも追い風となるよう活力増進を促す環境整備が急がれる。