モーダルシフト裾野広げる
政府が6月に取りまとめた「物流革新に向けた政策パッケージ」には、直面する2024年問題への対応とともに、2030年度に向けた中長期計画の策定・公表を本年末までに行うとしている。各規制的措置の導入・適用のほか、モーダルシフトに係わる施策も要点となる。
国土交通省は、新たに官民物流標準化懇談会の下にモーダルシフト推進・標準化分科会を設置し、7月28日に初会合を行った。3回程度の開催を経て9月までに方向性を取りまとめる。モーダルシフト推進の意義を広く発信するとともに、並行して標準化を図り、必要なハード整備を着実に講じていく必要がある。
政策パッケージには「何も対策を講じなければ24年度で14%、30年度で34%の輸送力不足」の試算を踏まえ、24年度の施策効果で「荷待ち・荷役の削減」、「積載効率の向上」、「モーダルシフト」、「再配達削減」の各数値を出し24年14%を回避する目安を示している。
この中でモーダルシフトの数値は小さい。課題も多く短期に成果に結びつけるのは難しいが、その分、中長期的な措置を確実に進めることで生産性向上へ大きな余地がある。「30年34%回避」はモーダルシフト推進の施策が大きく左右するともいえる。
分科会では、トラック長距離輸送から鉄道や船舶へのモーダルシフトを推進するため、コンテナ専用トラックやシャーシ、コンテナなどの導入促進を含め、貨物鉄道、内航海運の輸送力増強・活用に係わる課題や推進方策を議論・検討する。
先行したパレットの分科会では標準化へ具体的な推奨案を整理しているが、モーダルシフト分科会においても各種コンテナの構成比率の在り方について一定の方向性を示す考え。例えば鉄道は保有ベースで12ft、31ftが中心だが、国際規格は40ft、20ftであり輸出入貨物の積み替えの荷役負荷など現場の状況や議論を踏まえ検討していく。
意見交換では荷主の協力や、モーダルシフト推進への賛同を求めるなど指摘があった。標準化にも、モーダルシフト推進の意義を広く発信し、あらためて運送事業者、荷主に浸透させる働きかけも重要だ。
政策パッケージにも記述されているが、貨物鉄道の輸送余力など見える化したシステムの導入や、フェリーの積載率の定期的な調査・荷主への情報提供など「利用可能な輸送力への周知」がモーダルシフトの裾野を広げるものであり留意したい。