行動変容へ広く事例横展開
商慣習の見直しが進む食品流通業界で、物流改善を実施する食品メーカー、小売事業者が流通経済研究所の調査により新たに公表された。
これまでも10月の食品ロス削減月間等に合わせ、「納品期限の緩和」や「賞味期限表示の大括り化」に取り組む事業者を公表してきた。さらに「翌々日納品」や「休配日の設定」など項目を具体化した上で調査を行い、食品メーカー194社、小売事業者160社を公表した。
「納品期限の緩和」や「賞味期限表示の大括り化」に取り組む事業者は引き続き増加している。食品ロス削減の機運が年々高まっている表れだ。この間、農水省、環境省、消費者庁など行政とも連携して小売事業者には納品期限の緩和を、メーカーには賞味期限表示の見直しを働き掛け、協力を表明した企業名を公表するという施策の成果でもある。
食品ロスの削減は人手不足が深刻化する物流現場の労働環境改善にもつながる。
賞味期限表示の大括り化は表示単位を「日付」ではなく年月表示などにするもの。日別管理でなくなることから納品期限切れを回避して出荷できる機会が増え食品ロス削減につながるとともに、検品時間が減り、積み下ろし時間が減る。トラックの回転率向上や、月別管理による倉庫スペースの効率化、トラック積載率向上も期待される。
食品ロスが社会的問題としてクローズアップされたように、現在、2024年問題を控える物流改善への関心も高まっている。効率的で持続可能な物流への転換が急務であることから、流通経済研究所では取引慣行の見直しに注目し、今回、受発注リードタイムの見直しや休配日の設定などに取り組む事業者を調査、公表した。
今後、こうした調査結果を広く消費者にも周知し、食品ロス削減に積極的に取り組む事業者の商品や店舗を利用するよう呼びかけるとしており、同様に物流改善についても広く周知したい。
物流標準化で先行する加工食品分野では先日の国交省のフォローアップ会合に化学品、菓子、酒類関係の協議会等メンバーも参加した。先行事例を横展開していく動きだ。
政府の一連の物流政策パッケージでは荷主・消費者への行動変容を柱の1つとしている。食品流通は食品ロス削減と物流改善という2つの観点から商慣習是正が加速化する。他業界にも参考となる事例を広く横展開したい。