裾野広げ有用性を広く周知
モーダルシフトの推進について、政府による「物流革新緊急パッケージ」には鉄道、内航海運の輸送量・分担率を10年程度で倍増とする方針をたてている。大型コンテナ導入の支援など補正予算案にも反映され、輸送力増強へインフラ整備を拡充する。
24年問題で物流への関心が高まる中で、モーダルシフトが施策の柱に示されたことで、荷主はじめ関係者間で普及拡大へ課題を共有、解決していくことが求められる。
日本物流団体連合会(物流連)の真貝康一会長は「モーダルシフトは一朝一夕ではできない。関係者で意思統一し、スピード感を持って取り組むことが重要」との見解を示す。物流連では消費者も含めた関係者へ物流の認識、理解を深めるべく広報活動にさらに注力する考えだ。
国がモーダルシフトの10年倍増を描くように、24年問題の足元の対策とともに、これを契機にした人手不足、働き方の変化を見据えた中長期的な視点からモーダルシフトの役割は大きい。
政府が6月に策定した政策パッケージには輸送余力などの見える化やフェリー積載率の定期調査、荷主企業の情報提供など利用可能な輸送力の周知を記載している。インフラ設備や技術開発と同時にスムーズに活用、普及できるようその実態の見える化が急務だ。
物流連はモーダルシフトを積極的に推進した優良な物流事業者を公表・表彰する制度を2003年から行っている。今年度は佐川急便の「飛脚JR貨物コンテナ便」と、全国通運の「卸売業者、小売業者と連携した鉄道貨物輸送への転換」と7年ぶりに最優秀賞の大賞がダブル受賞となった。
環境負荷低減や輸送の効率化とともに、佐川急便は「鉄道を使用したことがない中小企業を含めて様ざまな客層に販路を広げた」、全国通運は小口配送の集約で「個々の小売り業者では利用が難しかった鉄道輸送が可能となり、これまで行っていなかった商品も輸送できた」ことが評価された。
いずれもモーダルシフトの新たな販路開拓で普及を大きく後押しするものだ。事業者の規模、商品分野の裾野を広げることで新たな価値創出の可能性も膨らむ。
全国通運の事例はスーパーの店頭でもPОPで鉄道輸送により商品を調達していることをPRしている。荷主、さらに消費者も巻き込み、広く関係者の理解を促す事例を周知させていきたい。