転嫁加速と付加価値追求
厳しい事業環境の中でも「人手不足」と「燃料高騰」の課題は長期化している。人手不足は2024年問題への対応が迫られ、各業界で深刻度は増し、業績予想の下振れ材料となっている。
帝国データバンク(TDB)の調査によると、今年度業績見通しの下振れ材料では「人手不足の深刻化」が39・4%と4割が回答(複数回答可)した。前年を5・5ポイント上回りコロナ前の19 年度見通し以来5年ぶりにトップとなった。続く「原油・素材価格の動向」は前年より11・9ポイント減少したが33・3%と3社に1社が回答している。
運輸・倉庫の下振れ材料は「原油・素材価格の動向」が55・1%で前年より7・3ポイント減少したが最も多く回答。続く「人手不足の深刻化」は54・1%で3・8ポイント増えた。「2024年問題」も49・1%が回答し、労働環境の是正に努めながらも「賃金相場の上昇」も29・7%と3割が下振れ材料と回答する。
人手不足、燃料高騰はどの業界にも共通することだが、運輸・倉庫は他業界よりも価格転嫁が進まない分、収益力の足かせとなっている。
一方で業績予想の上振れ材料では「個人消費の回復」が全体、運輸・倉庫ともトップだ。賃上げによる家計の購買力向上に期待を寄せる様子がうかがえる。価格転嫁の加速化とともに、緩やかに持ち直すとされる個人消費がどこまで好転するかが業績に大きく左右する。
TDBの3月の景気動向調査では、生産活動が本格化した自動車、電機など製造業、好調な観光産業やインバウンド消費の拡大などもあり3カ月ぶりに上向いた。運輸・倉庫も改善し、販売価格DIが過去最高を更新し一定の価格転嫁は進んでいるようだ。
3月の小売動向では既存店で百貨店が前年比9・9%増、スーパーが9・3%増と大型店が大幅に伸長。単価増もあるが、百貨店はインバウンドと高付加価値商材が活況で、インバウンドはコロナ前の19年比でも5割増。国内市場も前年比3・7%増と堅調だ。
大型連休の国内旅行者数はほぼコロナ前水準に戻ったとされる。6月には所得税などの減税が始まり、夏のボーナス支給など個人消費拡大への期待は膨らむ。
コロナの5類移行から1年が経ち日常が戻りつつある。物流はコロナ禍における行動様式などの変化にも対応してきた。消費回復を追い風に付加価値型を追求して商機を見出したい。