供給網効率化の好循環を

ヤマトホールディングスが荷主、物流事業者をつなぐ共同輸配送のオープンプラットフォームを提供する新会社を設立した。4月から1部荷主と実証を始め、当初はヤマトが主体に輸配送を行うが、参加企業を募り年度内にも本格運用する。商流、物流が一体のサステナブルなサプライチェーンを構築する。
2024年問題に直面し、物流効率化を求める動きは、事業者間、さらに荷主、物流事業者の業種の垣根を越え加速化する。個別企業単体では限界があり、大手事業者が率先して物流業界全体の効率化を図ろうと協業、共創も相次いでいる。
こうした中で新会社は2年目には1日80線便の運行を計画し、実現すればGHG排出量を42・2%削減、省人化率65・1%という試算を出している。標準パレットの混載により、企業間輸送で40%とされる積載率は70%以上に高める考えだ。
宅配便は企業間物流と比較し標準化、統一化が進んでいる。宅配最大手のヤマトがそのノウハウを活用し、ネックとなっている低積載、長距離の幹線輸送で幅広いステークホルダーを対象にプラットフォームを立ち上げるのは大きなインパクトがある。
ヤマトグループは2018年から内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の 「スマート物流サービス」 に参画した。プラットフォームの基盤システムはSIPの「物流・商流データ基盤」を構築した富士通と共同で進めている。デジタルとリアルの実運送をすべてカバーする。
共同輸配送には様ざまな課題があるが、業種ごとにシステムや規格、商慣行などが異なり、異業種間の取り組みが難しい点がある。
今回、ヤマトグループが宅配便で培った約160万社の法人顧客や、4000社以上の物流事業者とのパートナーシップ、輸配送ネットワーク・オペレーション構築のノウハウを活かしながらこうした課題を解決していく。
地域の物流事業者は幹線輸送を新会社が行うことで、域内配送で効率的に複数社の集荷を担い、地域内の持続可能な物流を構築することも眼目にある。
トラック運送業は多くが中小・零細である。同時に事業者それぞれ地域の基盤を背景に強みを持つ。厳しい経営環境の中、地域に根差した物流事業者が体力をつけることはサプライチェーン全体の効率化、強靭化になる。そうした好循環を促したい。