「物流革新」が地域課題解決
埼玉県秩父市で、山間地域の少子高齢化による移動の困難に着目した物流・公共交通ネットワーク「秩父モデル」構築に向け、共同配送サービスの実運用が始まった。
物流は2024年問題に直面し、今般の改正法においても「運送・配送業務の効率化・平準化」が重要な課題となっている。地方、とくに過疎地域では「ものが運べない」リスクが高まり、喫緊課題として抜本的な対策が急務だ。
秩父市生活交通・物流融合推進協議会では2021年の発足以降、「秩父モデル」構築へ数々の実証実験を重ね、その結果を踏まえ実装ステージに入った。共同配送は協議会加盟社のヤマト運輸、西濃運輸、福山通運3社の荷物を集約し、地域の事業者が個人宅まで配送するもの。
協議会は秩父市の山間地域におけるトラック1台当たりの積載量の少なさに着目し、22年9月に複数の物流事業者の荷物をヤマト運輸が配達するプレサービスを実施、その結果を踏まえ実運用に至った。今後、小売事業者とも連携した買い物支援サービスや、共同配送スキームを活用した新たなビジネスも検討するという。
この共同配送サービスのほか、遠隔医療サービス、各種情報のダッシュボードシステムの提供も併せて始めている。物流に、生活交通、観光交通、医療など、地域の多様な分野で先端技術を活用した連携が注目される。
先端技術の活用では、セイノーホールディングスがエアロネクスト、NEXTDELIVERYなどとともにドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流「SkyHub」を全国で推進している。1日からサービスの提供を開始した静岡県川根本町で実装段階に入った自治体は10件を数える。
フードデリバリーや買い物代行、さらに各運送会社と連携した共同配送も検討している。災害時対応も含め新たな物流インフラを構築することで、地域課題の解決に貢献する。実装に向けては各自治体と協定を締結、実証実験を重ねてきた。
こうした過疎化等の地域課題の解決に向けても「物流革新」が大きく貢献する。
ニーズや採算性など課題も多いが、官民に荷主、異業種の地域の事業者が相互に連携、協力し新たなアイデアも生まれる。自治体間も共通する課題は多い。各地で事例が広がることで、持続可能な地域の物流の確保と新たな物流インフラの創出が期待される。