サプライチェーン全体最適を
改正物効法では荷主・物流事業者に対する規制的措置が講じられる。8月26日の国土交通省、経済産業省、農林水産省合同会議(第2回)では、荷主、物流の関係団体が意見・要望を述べた。荷主側、物流事業者側の立場だけでなく、業種や事業規模、地域など物流現場によって考えに相違もある。
規制的措置は全事業者への措置(努力義務)を公布後1年以内(2025年4月想定)、一定規模以上の特定事業者への措置(義務付け)を2年以内(26年4月想定)に施行としている。
3省合同会議では努力義務に関する基本方針、判断基準と、特定事業者の指定と課せられる中長期計画や物流統括管理者(CLО)選任などについて議論を進めている。
第2回会合では事務局が取りまとめ素案も示した。関係団体ヒアリング、意見交換を行った上で座長の根本敏則敬愛大学特任教授は「取りまとめ素案のうち基本方針、判断基準は委員で大きな意見の相違はないと感じるが、荷待ち・荷役時間については秋口の会合で」とコメントしている。
荷待ち・荷役時間は「可能であれば時間を分けて計測」とするが、経団連は「分割せず合算計測」を要望。計測対象施設も物流現場によって事情は異なる。計測にもシステムや費用など事業者への負担があり、これら一定の支援策が必要だろう。また、荷待ち・荷役の定義について全ト協は「車上受け車上渡しが運送におけるルールであることが荷主に知られていない」と周知を求める。
一方、日本商工会議所によると、中小荷主では人手に頼ったアナログの計測方法も多く、荷役時間まで詳細に把握することは困難とも指摘する。
日商の調査では物流の2024年問題でマイナスの影響があると回答した企業は84%。具体的には「物流コストの増加」が9割超で、うち物流コスト増加分を価格に転嫁できていない企業は約7割。原材料価格等に比べ、多くの中小企業で物流コストの価格転嫁が難航し、「自社だけで物流効率化の取り組みを進めるのは困難」との見解である。
中小が多数であるトラック運送業界も価格転嫁が進まない。それだけ荷待ち・荷役時間を可視化してしっかりと中小企業が価格転嫁できるような制度設計が肝要だ。
特定事業者と取引する中小事業者の改正法への認識も指摘される。現場の実態把握とともにサプライチェーン全体最適の視点が求められる。