価格転嫁・雇用安定の好循環を

8月分のWebKIT成約運賃指数が過去最高の「140」を記録した。2018年12月の「137」以来5年8カ月ぶりの更新となる。指数は前年同月比で38カ月連続プラスと上昇基調の中で、8月は猛暑による季節商材などスポット需要の増加もあり急上昇したようだ。
業界の代表的なスポット運賃指標であるWebKIT成約運賃指数は2010年4月の「100」を基準とする。例年12月に高値をつけるが、2020年以降、130台は22年12月「130」、23年12月「135」から、24年は3月「131」、4月、5月「130」、7月「131」と着実に上昇する。
燃料費や人件費などコスト高止まりの中でトラック運送業の価格転嫁、働き方改革による労働環境改善に向けた動きもこうした運賃指数に反映され動向に注視したい。
帝国データバンク(TDB)の8月景気動向調査でも、物流事業者の荷動きや販売価格上昇の傾向から、運輸・倉庫業界の景気DIが45・0に改善、コロナ前2019年11月(45・1)以来の水準まで戻した。
やはり季節商材や、製造、建設など幅広い業種に好材料が波及して荷動きが上向いたほか、物流関係者から価格転嫁が進むコメントが聞かれ、収益面の改善が指数に反映されているようだ。小規模企業を中心に幅広く回復しているという。
日本倉庫協会が7月に会員に実施した、価格転嫁の状況に関する実態調査では、保管料・荷役料・運送料については約7割が価格転嫁できたとし、達成率も概ね目標に達したと回答している。価格転嫁できたことで達成可能なこととして、「賃上げ」が最も多く、約半数が回答し、次いで「設備投資、新規開発」を挙げている。
同調査からは依然として「荷主が価格転嫁の雰囲気にない」、「競合他社が価格転嫁せず、 価格競争力を維持する必要がある」などの声も聞かれるが、コスト上昇分を適正に収受し雇用を安定化させる好循環をサプライチェーン全体で促したい。
来年度予算案の概算要求では物流革新に向けた各種助成事業に厚みを増している。中小事業者も体力をつけ積極的に活用したい。
トラックの「標準的な運賃」の事業者届出件数が全国ベースでようやく6割を超えた。地域により半数以下のところも多くさらなる周知が必要だ。
9月は「価格交渉促進月間」であり、賃上げ原資の確保へ踏み込みたい。