消費者マインド改善足踏み

宅配需要の弱含みが続く中、大手のヤマトホールディングス、SGホールディングスは今年度通期の取扱い個数予想を引き下げた。EC市場の広がりも、個人消費の回復が遅れ想定を下回る。
ヤマトHDの4-9月期における宅配便3商品(宅急便・宅急便コンパクト・EAZY)の取扱個数は前年同期比3・5%増だった。法人領域(大口)が新規獲得の進展で8・5%増と拡大の一方、リテール領域(個人・小口法人)が1・9%減、直近7-9月は改善の兆しが見られるものの想定には未達だった。
SGHDは4-9月期のデリバリー事業取扱個数が3・9%減、想定も下回った。BtoB・BtoCともに減少。物価高を背景に消費者マインドの改善に足踏みが見られることや、「宅配便需要の全体的な回復には至っていない中で競争環境が激しくなっている」ことを挙げる。
単価はともに4月から届出・運賃料金を改定したが、SGHDは取引ごとの適正運賃収受の取組みも含め2・1%増。ヤマトHDは、リテール領域は上昇したが、法人領域が顧客構成比などの影響で減少し全体で1・7%減となり、引き続きプライシングの適正化に注力する。
宅配便数量の通期予想はヤマトHDが3商品で予想比1570万個減の19億5280万個、SGHDが4000万個減の13億2000万個としたが、消費動向は不透明で、さらなる減少は全体の収益に大きく影響する。適正運賃・料金収受とともに、ニーズに応えるサービスの拡充に注力する方向だ。
ヤマトHDは、リテール領域について「高い成長を期待するのではなく、付加価値の提供による安定的な収入確保が重要」とし、ネットワークの強みを活かした差別化、サービスラインナップの拡充、さらにセールスドライバーの営業活動強化を図る。
物流各社の4-9月期決算では、新規獲得を含め荷動きの回復や、価格転嫁の進捗など通期予想を上方修正する企業もある。それでも下期の物量は弱含みととらえるところもあり、景況感も下振れ懸念を抱える。
全日本トラック協会「トラック運送業界の景況感」の判断指数は、7-9月期実績、10-12月期予想とも改善を示すが小幅にとどまる。価格転嫁は進むもコストアップが経営を圧迫する。
政府は月内にも総合経済対策を取りまとめるが、荷動き全体の回復へ個人消費を下支えする施策が期待される。