働き方改革の実現なるか
安倍首相は9月27日、首相官邸で働き方改革実現会議の初会合を開いた。「第三の矢、構造改革の柱となる改革」(安倍首相)と位置づけ、「もはや先送りは許されない」(同)と、スピード感をもって取り組む覚悟を示した。
安倍首相は、先日訪米した際に、ニューヨークのビジネス関係者に対して講演を行い、そのなかで「働き方改革」を進めていく考えを表明したという。首相は「日本の企業文化そのものであり、長時間労働の上に様々な商慣行があるものを果たして変えていくことができるのか、という雰囲気を感じ取ったが、その際『腕まくりをして、この課題に取り組んでいく』と申し上げた」と、エピソードを交えて決意を示した。
会議では、同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善、賃金引き上げと労働生産性の向上、時間外労働の上限規制のあり方など長時間労働の是正――などがテーマとなる。
トラック運送事業も「働き方改革」と無縁ではない。関係閣僚として会議に出席した石井啓一国土交通相は、「将来の労働力確保の観点からも、トラック分野の働き方改革は待ったなしの課題だ」と述べ、積極的に取り組んでいく考えを示した。
今年度内に具体的な実行計画をまとめる予定だが、労働問題は労使の利害が一致しない事柄が多いため、調整は難航する可能性もある。
連合は、この日の会議に、長時間労働対策として、労働時間の量的上限規制導入を提案した。告示である「時間外労働限度基準」を法律に格上げするとともに、36協定を適用する場合の上限時間規制を法定化するよう求めた。
その際、この「時間外労働限度基準」の適用除外となっている自動車運転者について、改善基準告示の法制化と罰則の創設を求めた。
改善基準告示の法制化は、運輸労連がかねてから求めているもので、「限度基準」を法律にする際に、自動車運転者を適用除外とせず、自動車運転者も含めたかたちで法律により規制するよう求めたものだ。
連合の政策要求によると、この「法制化」では、改善基準のうち「休息期間」と、その違反に対する罰則だけを法律に規定し、運送事業者に対して連続休息期間の確保を義務づける、というものだ。
官邸主導の「働き方改革実現会議」でどこまで具体的な議論が進むかは不明で、議論の場を労働政策審議会に移す可能性もある。
いずれにしても、労働者側にとっては追い風だが、使用者側が反発する可能性が高く、今後の議論の行方が注目される。