改善進む食品ロス対策
食品ロスの削減へ、国が省庁連携で納品期限緩和や賞味期限表示の大括り化を呼び掛け、実践する事業者が着実に増えている。先ごろまとめた調査結果によると、納品期限の緩和(予定含む)は1年前に対し44社増え186社、賞味期限表示の大括り化も67社増の223社となった。
2050年カーボンニュートラルへの動きが過熱する中で食品ロス削減はこれに大きく貢献する。消費者の意識啓発の観点からも、誰でも今からすぐにできる。その積み重さねと事業者の改善意識のムーブメントは脱炭素化実現への近道になる。
食品ロス・廃棄物の発生によるCО2排出量は世界全体の1割相当という。生産と廃棄処分で二重に排出し、廃棄プロセスでは他の廃棄物よりも多くのCО2を排出する。
物流においても食品ロスの発生は廃棄処分にかかわる輸送があり、その分CО2排出量が増える。一方で各段階の是正による物量の適正化、輸送の効率化が進んだ分の削減効果が見込まれる。
今般の調査で納品期限3分の1以内という慣例を緩和する小売り事業者は総合スーパーやコンビニなど大手は既に浸透しており、食品スーパー、ドラッグストアで新たに取り組む事業者が増えた。サプライチェーン全体でその意識が高まっている。
調査を行った流通経済研究所によると、186社のうち、調査品目6区分(清涼飲料、賞味期限180日以上の菓子、カップ麺、袋麺、レトルト食品、その他加工食品)全てで緩和アイテムがあるとした小売業が83社あった。生協とコンビニでその割合が高く、意欲的な取り組みが行われているという。
賞味期限大括り化では缶詰、瓶詰、レトルト、清涼飲料、菓子、調味料のメーカーなどで取り組みが増えておりアイテムの広がりが見られる。
流通現場の商品管理では前回より消費期限の古い商品は納入されない慣行だが、表示の大括り化で日付順の対応から解放され食品ロスが抑制される。商品管理単位の減少で物流効率化も進む。こうした商慣習見直しを含めた食品ロス削減活動の事例を共有していきたい。
消費者啓発においても〝てまえどり〟をはじめ店頭でのPОPや掲示板表示など、小売りが独自に工夫した普及活動がみられ、これらの広がりも期待される。
喫緊課題である人手不足に、コロナ禍でさらなる省人化が求められる物流現場の改善にもつながる食品ロス削減への取り組みはますます大きな意義を持つ。