標準引越運送約款改正へ

標準引越運送約款がようやく改正される運びとなった。

最大の焦点は、長年の懸案だったキャンセル料の引き上げだ。元々、他のサービスに比べて低く設定されていたキャンセル料を他産業並みにするもので、昨今の運転者不足などから、人や車両の確保が非常に困難になってきていることが背景にある。

引越事業者は、引越の1週間以上前から車両と作業員の手配を行っているケースが多く、2日前の時点で解約・延期された場合、他の仕事を受注することは困難だ。

トラック運転者の有効求人倍率は、今年8月現在で2・42倍となっており、全職業計の1・35倍と大きな水をあけられている。また、全日本トラック協会調査による7-9月期のトラック運送業界の労働力不足感判断指標は、前期比0・2ポイント増のプラス81・5と高止まりしており、10-12月期は同95・5と過去最高を記録する見通しとなっている。

全ト協が2013年に各都道府県の引越部会員に実施したアンケート調査結果によると、解約・延期が生じた場合の損失費用の割合は、2日前で23~24%、前日が36~37%、当日では71~75%だ。

さらに、貸切バスや旅行など類似の他サービスの当日キャンセル料は、約款で50%としている例が多く、引越の20%は余りにも低い。

このため、国交省が標準引越運送約款を改正することになったもので、前回の会議から足かけ2年半かけての結論となった。

改正案では、キャンセル料の料率を引き上げるほか、キャンセル料が発生する期日を「前日」から「2日前」に拡大する。

全ト協が昨年実施した実態調査によると、回答者の全成約件数は4万8569件で、前日までのキャンセル発生件数は177件と全体の7・1%を占めている。これを「2日前」に拡大することで、約款によるカバー率は13・6%にまで高まることになる。

また、キャンセル料の対象となるのは従来「運賃」だけだったが、今回の改正案では「運賃及び料金」と料金部分も含めることにした。

折しも、運送以外のサービスの対価としての「料金」を適正に収受できるようにするための、標準貨物自動車運送約款の改正が施行されたばかりだ。

大手物流企業では、適正運賃・料金収受の効果が出始めている。標準引越運送約款の改正が、適正運賃・料金収受にもつながることを期待したい。