物流現場に活力を
物流各社の4-6月期決算は、感染症拡大の影響で多くが収益を悪化させた。期初ではほとんどが未公表だった通期予想は現況を踏まえ公表したところが多いが、総じて厳しい内容だ。
国内ではECの急増を背景とした宅配や、食料品、日用品など在宅需要の品目が主力のところは底堅いが、多くは減収減益の基調。
さらに国際物流は輸送需要の減退が大きく響く。中国やアジアの一部は回復が見られるものの世界的な感染再拡大の動きと、需要低迷の長期化、米中対立など先行き不安要素は広がり、通期の回復予想も状況によっては悪化に転じる懸念もある。
トラック運送業は品目によって実情は異なるだろうが、全体の物量の停滞が続けば売り上げ拡大は難しい。それでも人手不足の中で労働条件改善は必然であり、収益力改善には一段の効率化、生産性向上が必要だ。
物流大手ではデジタル化など業務改革を進めその成果も見られるが、中小が大半のトラック運送業界は1社単独では限界もある。荷主も含めたサプライチェーン全体で取り組むべき課題も多い。
コロナ禍でも物流を止めない使命感で動く現場への理解を広く発信していく環境づくりが大事だ。エッセンシャルサービスとしての物流を止めないため、国も省庁連携による的確な施策が待たれる。
このほど着任した国交省公共交通・物流政策審議官の久保田雅晴氏は、自粛による宅配便の急増で人手不足が顕在化したことや非接触の動きなど物流標準化は待ったなしの状況と指摘。同時に「荷主や消費者の意識も変わってきた」とし、この機会をとらえ新たな可能性を追求したいとの認識だ。議論が始まった次期総合物流施策大綱にもさらなる生産性向上につながる具体策を盛り込んでほしい。
自動車局長に着任した秡川直也氏はこれまでの職務の中でも貨物課長時代が「思い出深い2年数カ月」と振り返る。また、この間の変化を「物流は当然あるものでなく、重要な生活の基礎インフラとの理解が広がっている」との認識だ。貨物課長当時から取引適正化へ業界とともに動いてきた。「再び携わる縁でもあり成果を出したい」。その強い意欲に期待したい。
適正運賃・料金収受の観点では、経済活動の停滞で荷主との交渉はアゲインストが続くが、エッセンシャルサービスとしての物流への理解は社会に確実に根付く。この潮流をフォローに物流現場が活力を出せる施策が求められる。