物量回復もコスト懸念続く
小売業の売上動向をみると、6月は前年の営業制限による反動に外出機会の増加もあり、百貨店や外食産業の伸長が目についた。政府はコロナ第7波で感染拡大がピークを迎える中でも行動制限は行わない方針を示しており、経済・社会活動が正常化する良い方向で景気が持ち直してほしい。
6月は百貨店が入店客数2ケタ増、気温上昇で夏物衣料や服飾雑貨、高額品も購買が伸びた。コンビニも来店客数が増加し、既存店売上はコロナ禍の影響を受けていない19年も上回っている。
外食産業も6月売上高は前年比2割増で、「土日休日」「家族客」の客足が好調、19年比でも7%減まで戻している。
一方でこれまで伸びていた内食関係は低調で6月はスーパーが10カ月ぶり、生協が4カ月ぶりの前年割れ。いずれも主力の食料品が鈍く、物価上昇の影響も重なった。それでもスーパーでは衣料品や住居関連品は季節需要を取り込みプラスとなっており、外出機会の増加により物量の拡大も見込まれる。
国土交通省が毎月公表するコロナの影響調査によると、6月のトラック運送収入は19年比で2割超減少の割合が14%と依然厳しさが伺える一方、「影響なし」も57%と、影響がまだ大きくあらわれていなかった20年2月(56%)を除き初めて半数を超えている。
ウイズコロナの中で新たな需要をしっかり取り込みたいが、足下はコロナ変異株の流行による感染者数の増大もあり先行き予断は許さない。
政府の7月月例経済報告では、景気は6月の「持ち直しの動きがみられる」から「緩やかに持ち直している」に。ただ先行きは「原材料価格の上昇、供給面での制約等による下振れリスクに十分注意が必要」との基調判断は変わらない。コスト上昇の懸念が続き、とりわけ中小事業者の経営に重くのしかかる。
全国中央会の6月の中小企業月次景況調査によると、運輸業の主要指標は4カ月連続で改善を示したものの小幅の変動にとどまる。物量の回復で売上DIはプラス水準だが、コスト上昇懸念から景況、収益状況DIはマイナス30台の低水準だ。
燃料のみならず資材やあらゆる物価の上昇が続く。タイヤメーカーも大手が相次ぎ再値上げを発表するなど後を絶たず、コスト上昇圧力の不安は拭いきれない。
緩やかながらも景気が持ち直す中で、国には引き続き緊急対策の実行とともに、物価・景気の状況を踏まえた迅速な対応が求められる。