過酷な勤務状況明らかに
事業用自動車事故調査委員会が、昨年3月広島県東広島市の山陽道八本松トンネルで起きた多重追突・火災事故についての報告書をまとめた。
事故を起こしたのは、埼玉県に本社を置くトラック運送事業者で、66台を所有し、従業員数は64人。
事故は、中型トラックの運転者が、連続する乗務の疲れから居眠り運転をし、渋滞停止中の前方の車列に気付かず、ブレーキを踏むなどの回避操作をすることなく、時速約80㌔㍍で追突して発生したものだ。
同調査委員会が調査を進めると、その過酷な勤務状況が次々と明らかになった。
事故前3ヵ月間の運転者の勤務状況は、休日は年末年始の6日間のほかは3日と極端に少なく、厚生労働省が定めた基準を超える休日労働や長時間の拘束時間も確認された。また、事故の3日前から前々日の乗務では、一睡もすることなく計約36時間の乗務を続けていた。
このような過酷な勤務状況で疲労が蓄積しているなかで、到着予定時刻に間に合わせるために7時間の連続運転を行い、その後に取った4時間の仮眠では疲労が抜けきれなかったため、居眠り運転に至ったと考えられている。
運行管理者は、当然ながらこの過酷な勤務状況を把握していたが、休日を取らせたり、運行計画を見直すなど、疲労を回復させるための措置をとらず、運転者の疲労状況を注意深く確認することもせず運転させていた。報告書は、これも事故の一因だとしている。
そのうえで、会社の代表者と運行管理者の安全管理の重要性に対する認識の欠如が、事故を起こすことになった背景にあると分析している。
ただ、運行管理者の口述で、気になる部分がある。運転者に対し、4時間ごとに30分の休憩を取るように言っても、経験の長い運転者はうるさがり、指示に従わず自分が休憩したい時に取っていたので、休憩地点と時間は運転者に任せていたという。
また、運転者のなかには、「拘束時間の基準を超えてでも乗務させてほしい」とか、「休日は少なくてもよいから乗務回数を増やしてほしい」と言ってくる者もいて、運送の依頼があれば、これらの要望に応える対応をしていたという。
事業用自動車事故調査委員会の酒井一博委員長は、働き方改革が目下の業界の大きな課題となっていることから「労働条件を良くしていかないと、結局は自分たちで業界の足を引っ張ることになるのではないか」と話している。