「持続可能」から「持続的成長」へ
政府の物流革新に向けた政策パッケーに盛り込まれた規制的措置の改正法案が閣議決定した。商慣行や多重下請構造の是正など、物流の構造的問題に対し、抜本的・総合的に対策を講じるものだ。
大きくは物効法による荷主・物流事業者に対する規制と、貨物事業法によるトラック事業者の取引に対する規制。前者は省エネ法、後者は建設業法を参考とした。
今国会の審議を経て公布から施行期間は1年、荷主・物流事業者の特定事業者に対する規制は2年の周知期間を置く。ドライバーの時間外労働上限規制が適用される4月を過ぎるため、先んじて業界・分野別の自主行動計画の作成・公表を促し、現在約120の団体・企業が公表しており、直近で不足する輸送力を補う。
標準的な運賃の見直し、トラックGメンの監視体制も含め、これら喫緊の対策の一方、今般、閣議決定された規制的措置は構造的な対策と位置づけられる。
荷主・物流事業者に対する物流効率化に取り組むべき措置は、その判断基準を所管省庁合同で作成する。先の自主行動計画では国交省、経産省、農水省3省が参考となるガイドラインを提示したが、荷主・物流事業者とも自主的な動きを促す。規制的措置ではあるが、物流効率化に積極的に取り組んだところが評価されるよう、可視化できる仕組み作りを国は考えているようだ。
中期計画の策定を義務づける特定事業者は物量の50%を想定し、その数で荷主は約3000社にのぼる。これには着荷主も含まれる。荷待ち荷役をはじめとした商慣行の是正には着荷主の対応が指摘されており制度の実効性が期待される。自主行動計画では小売り関係団体の公表も目につき、意識の高まりもうかがえる。
罰則規定も省エネ法に準ずるが、物流改善が省エネの取り組みと同じように一過性ではなく、継続的なことであることも社会に強く発信したい。
斉藤鉄夫国交大臣は13日の閣議後の会見で「構造的な課題に対応するため本年を物流革新元年として、この法案による規制的措置にしっかりと取り組み、中長期的対策も講じ持続的成長を実現したい」との決意を述べている。
政府は施行後3年で積載率向上による輸送能力を19年比16%増とするKPIを設定した。物流効率化により新たな価値も生み出す。足元の物流危機を回避し、物流を「持続可能」から「持続的成長」へと前向きな姿勢で臨みたい。