〝持続可能〟から〝成長産業化〟
〝シン・物流時代-物流の成長産業化に向けて〟と題して、日本経済団体連合会の「月間経団連」11月号において物流の特集記事が掲載されている。
現在、持続可能な物流の実現に向けて、商慣行の見直しや物流効率化が国の後押しで急ピッチに進む。記事ではこれらに加え「物流を成長産業化させる取り組みが欠かせない。物流事業者のみならず、荷主、一般消費者、政府も含め、物流に関わる全てのステークホルダーが自らできる第一歩を踏み出すことが何よりも求められる」とし、座談会や関係行政、事業者のコメントなどを載せている。
日本の代表的企業、主要団体で構成する経団連の機関誌で足元の物流危機を乗り越え、成長産業としての先を見据える政策提言の発信は大きなインパクトがある。
座談会には経団連の池田潤一郎ロジスティクス委員長、今村雅弘自民党物流調査会長、高岡美佳立教大学教授が出席し、各ステークホルダーの役割と具体的な課題解決策、成長産業化への必要な取り組みなどを議論。受け身ではなく、競争と協調による物流の高付加価値化など2024年問題を契機とした改革を展望する。
国交省の鶴田浩久物流・自動車局長は同記事の中で「2024年問題は一過性の課題でなく構造的な課題。この意味で、2024年で終わりではなく始まりである」とし中長期的視点で持続的な物流に向けて取り組む必要性を述べている。
6月に政府が策定した「物流革新に向けた政策パッケージ」には、喫緊課題への対策とともに2030年度に向けた政府の中長期計画を年内に策定・公表することとしている。
2024年問題に対し様ざまな措置・対策が講じられている。物流業界としても短期的、中長期的な課題を整理しその実効性をしっかり確保していきたい。事業者の前向きな戦略を促し、物流の成長産業化につながることが望まれる。
今般の総合経済対策においても物流は「緊急パッケージ」に基づき、賃上げ、人材確保など早期に着手するとともに、2030年度の輸送力不足の解消へ可能な施策を前倒しに行う方針を示している。
足元はとりわけ中小・小規模事業者の転嫁対策、賃上げである。迅速な対応が求められるが、中長期的課題にも荷主のさらなる理解が必要だ。2024年問題で危機意識は共有されつつあり、「持続可能」から「成長産業化」の議論も深めていきたい。