〝掛け算〟で強いインフラ
セイノーホールディングスが三菱電機の物流子会社である三菱電機ロジスティクスの買収を発表した。三菱電機と合意し10月1日で株式66・6%を取得する。物流業界のM&Aが加速化する。
直近ではSGホールディングスによるC&FロジホールディングスのTОB(株式公開買い付け)、ロジスティードによるアルプス物流のTОBが発表された。C&Fロジ、アルプス物流、三菱電機ロジともに売上高は1000億円超。それぞれ低温食品、エレクトロニクス領域で培った強い物流基盤があり、大手物流グループ傘下となることはサプライチェーン全体でも相当なインパクトを与える。
物流の2024年問題に直面し荷主や物流子会社もその対応に迫られる。さらに国内だけでなく、グローバルなサプライチェーンの最適化、強靭化も見据えた、物流大手の成長戦略が新たな業界再編を引き起こす。個社・グループだけでは乗り切れないことから物流事業者間の提携や、異業種間の協業、共創が活発になってきた。
セイノーHDは三菱ロジの買収について、昨年6月に策定した「ロードマップ2028」の一環とする。「特積みのセイノーからロジのセイノーへ」を掲げる中で、エレクトロニクス領域をロジの注力分野の1つとし、三菱電機ロジのノウハウとセイノーの物流ソリューションを「足し算ではなく掛け算とする」ことでグローバルなサプライチェーンの最適化を図る狙いだ。
三菱電機ロジもセイノーの国内外輸送インフラの活用により、調達・販売までの物流効率化や安定供給網を確立するとともに、三菱電機グループ外への事業拡大を図ることができる。
「輸送立国」をミッションとするセイノーHDの田口義隆社長は今回の取り組みを通じ、新たなインフラを提供できる好機と話す。日本の基幹産業である電機業界を支える大手との連携により「日本全体の効率化、生産性の向上で強いインフラを提供する」意義の大きさを主張する。さらに様ざまな企業とハード、ソフトで連携し、日本の成長力に繋げていきたい考えだ。
24年問題を契機に物流がクローズアップされる中で、サプライチェーンで影響力のある大手物流事業者の業種・業界を超えた協業、共創の動きが注目される。
生産性向上、コスト抑制とともに、新たな価値を創出し、物流の地位向上となる有機的な連携を待望する。