〝物流革新〟を前向きに
燃料費の高止まりに人手不足の深刻化から昨年度のトラック倒産件数は前年の3割増、9年ぶりに300件を超えた。小・零細企業の倒産が顕著で、2024年問題に直面し経営改善の施策が打ち出しにくい現状が浮き彫りとなった。
東京商工リサーチ(TSR)の調査では昨年度の道路貨物運送業の倒産は345件と前年の1・3倍。資本金1千万円未満が5割増で全体の7割以上を占める。
コロナ禍の20年度には180件まで減ったが、3年で倍近くまで増えた。この間、コロナ融資で凌ぐも、燃料高騰の影響が広がり、長引く人手不足とそれに伴う人件費向上によるコスト圧力が収益を圧迫し支えきれなくなった。
国の燃料高騰への支援策や、価格転嫁円滑化パッケージ、労務費の転嫁対策など取引適正化への環境整備も活用しきれず、商慣習の改善も一気には進まない。一定の転嫁はできても、あらゆるコスト高に追いつかない。業界の多重下請け構造もあり、是正に向けた動きはあるが、体力のない小・零細企業は先行き見通しが立たず、事業継続をあきらめるケースが増えているようだ。
TSRでは「大手業者がDXや運賃アップなど、生産性や収益を高める取り組みを加速させる一方、小・零細企業は下請け構造の立場の弱さ、荷待ち時間の負担が大きい」と分析する。もはや経営改善の手が打てない状況である。
倒産の傾向をみると、従業員の退職や採用難、人件費高騰などに起因する「人手不足倒産」の増加が顕著だ。TSR調査では前年倍増で過去最多の48件だった。
価格転嫁の遅れが賃金アップの流れに追随できず、ドライバーの確保が困難となりこうした状況を招く。コスト高から増員は困難で、生産性向上に対応しきれず、労働時間の削減が迫られ、人手不足の深刻度は増す。
何より価格転嫁が思うように進まなければ賃上げ原資の確保も難しい。業界全体で人材の確保・定着に向けた取り組みが急務だ。
11日の衆議院本会議で「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」、「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」案が賛成多数で可決、衆議院を通過した。
物流の持続的成長に向けて、様ざまな措置が講じられる。そうした中で実運送を担い、さしあたっての今日、明日が厳しい事業者が「物流革新」に前向きに臨める方策が求められる。