あらゆる機会で〝物流止めない〟を
トラック運送業は燃料高騰の価格転嫁が進まない。多くが中小零細事業者であり燃料費高止まりの長期化は深刻だ。
帝国データバンク(TDB)の6月景気動向調査では、運輸・倉庫業の景気DIは前月より0・1ポイント減の37・1と3カ月ぶりに悪化、調査対象の6割を占めるトラック運送業は1・0ポイント減の35・4と2カ月連続で悪化した。人流の回復で旅客関係が上向く一方、トラックは物量が総じて回復するものの、燃料価格高騰が経営マインドを大きく下げている。
とくに直近では燃料のみならず資材や様ざまな経費・コストが上昇し、これらの長期化が懸念される。
TDBの指標は50が良し悪しの判断目安となる。運輸・倉庫業の景気DI50超えは2018年の12月まで遡る。20年6月の21・5がコロナ禍の底で、21年12月に40・3まで回復したが再び30台後半でとどまる。
これに対し仕入れ単価DIは70台という高い数値が8カ月続いている。
販売単価についても、政府の燃料高騰・価格転嫁対策による助成や各施策の後押しもあり、TDBの指標では21年10月に50を超え、6月は19年12月(54・5)以来の54・2まで上昇。それでも70台の仕入れ単価DIとの乖離は大きい。ここがトラック運送業の全体景況を下げる大きな要因だ。
同調査で貨物関係の事業者からは「コストアップ分の価格転嫁が急務だが、顧客の業況も厳しくなかなか進まない」、「原油、物価、人件費が高騰するなか価格転嫁を進められない多重請負構造、労働集約型産業において先行きが不透明」と引き続き厳しい声が聞かれる。
トラック運送業界は2024年問題も間近に控え、人件費の上昇についても不可避である中で、適正運賃収受により原資となる収益の確保が追い付かない。
3年ぶりの対面開催となった7・8日の運輸労連の全国大会で、難波淳彦委員長は標準的な運賃の届出件数が5割弱にあることに言及、「標準運賃の届出とは、経営者として魅力ある賃金労働条件構築へのメッセージである」と届出促進を強く求めた。同時に様ざまな商品の値上げ理由にあげられる物流コスト上昇の背景には、トラックドライバーの賃金・労働条件改善も含まれることを訴える必要性を述べる。
コスト上昇、物価高の厳しい環境にある今こそ、〝物流を止めない〟主張をあらゆる機会をとらえて声を上げていく必要がある。