さらなる〝物流強靭化〟を
次期総合物流施策大綱の策定に向けた議論がスタートした。労働力不足、最新技術の進化、新型コロナウイルス感染症対策と、大きな環境変化により検討課題も多岐にわたる。物流が不可欠なインフラであることが社会に広く再認識される中で、経済成長と生活を持続的に支える有効な方策に期待したい。
現行の大綱が今年度で目標年次を迎え、次期大綱策定に向けた有識者検討会が立ち上がった。16日の初会合で現在の取り巻く環境や施策を確認、年内に7回の会合を開き提言を取りまとめる。
少子高齢化が進展し労働力不足は深刻度を増す。一方で物流需要はEC市場の急速な拡大が続き小口多頻度化が進展する。新しい生活様式も見据えながら、これらの対策が急務である。
国土交通省の瓦林康人大臣官房公共交通・物流政策審議官は検討会初会合の挨拶で「物流効率化はこれまでも重要な課題だったが、さらに取り組みを進めることが急務」とし、新たな時代のニーズに対応した物流の在り方について活発な議論を求めた。
物流生産性(物流事業の労働生産性)向上について、現行の大綱を受けて策定された総合物流施策推進プログラムでは、将来的に全産業平均並みに引き上げることを目指し、20年度までに15年度比2割程度の向上を目標に設定している。
これに対し17年度では15年度比13・1%上昇と全産業を上回る伸びであるものの、依然として絶対値では全産業に大きく届かない。就業者1人・1時間当たり付加価値額は17年度で全産業3602円に対し物流(トラック、内航海運、貨物鉄道、倉庫)は2263円という。
一方でAI、IоT、デジタル化、ロボット、自動運転などの最新技術の活用が展望される。スマート物流サービスの社会実装、並行してこれらを支える高度物流人材の育成も必要だ。
検討会の座長を努める根本敏則敬愛大学教授は、加工食品分野の物流標準化や国際物流における日本のコールドチェーン普及への動きなどを例に、この間の施策に一定の進捗を示した上で、ポストコロナに合わせた物流のデジタル化の加速をポイントにあげる。古くて新しい課題である物流の標準化は不可避だ。
現行の大綱では「強い物流」の実現を掲げた。平時、災害時もサプライチェーンを支える物流。その役割の大きさについて、社会の理解度は増すものと考えられる。それに応えられる一層の〝強靭化〟が求められる。