さらなる物流の強靭化を
能登半島地震は各方面に甚大な被害をもたらした。被災地は依然として懸命な復旧作業に追われている。1日も早い復興を祈念する。
年始を襲った災害には自治体の要請を待たない「プッシュ型」の緊急物資輸送が迅速に行われたが、道路の寸断が輸送や避難の妨げになった。過去の大規模災害の経験を生かしながら、新たな教訓として、有効な災害対策、物流の強靭化に繋げたい。
改めて災害時のライフラインとして物流が果たすべき役割の大きさを再認識する。平時も重要インフラとして地域の生活、経済を支え機能するよう気を引き締めたい。
物流業界は2024年問題に直面する。政府の政策パッケージに沿った各施策が進展する。予算措置も講じられ、通常国会では法制化への動きも具現化する。
さらにサプライチェーンの機能維持へ行政の動きが加速する。
農林水産省は年末に物流対策本部を立ち上げ、具体的な課題に対処するため、関係団体と官民合同タスクフォースを設置する。幅広い関係者が協力して、全国各地・各品目の物流現場の対応を一層強化するものだ。
農産物・食品流通は物流事業者の負担が多い物品で、トラック輸送が97%を占める。とりわけ生鮮食品は手荷役が多く、長時間の荷待ちや運行管理の難しさ、長距離輸送と、取り扱いを敬遠される事例も出ている。食の安定供給の側面からも物流改善は喫緊課題だ。
その問題意識から中継共同物流拠点の整備やパレット化、モーダルシフトなど先進事例も多くみられる。官民でこれらを共有しながら取り組みを後押しすることで物流改善が期待される。
もう1つ、取引適正化の観点で注視されるのが公正取引委員会による労務費の適正な価格転嫁に向けた取り組みだ。
価格交渉に関して12月に発注者・受注者双方の立場から12の行動指針を取りまとめた。年末に公表した緊急調査結果では、道路貨物運送を含む労務費率の高い業種や多重構造にある業種で転嫁が進んでいない実態を明らかにし、継続的に調査、対処していくという。
運輸審議会に諮られるトラック運送業の「標準的な運賃」見直し案でも、多重下請け構造の是正へ利用運送手数料の水準を示している。
重要なライフラインである物流が機能を継続すること。とりわけ実運送の適正運賃・料金収受であり、各施策の実効性をしっかり見据えたい。