さらなる転嫁対策を
全日本トラック協会の7-9月期「トラック運送業界の景況感」によると、判断指数は4-6月期より1・4ポイント悪化と足踏み状態だ。10-12月期は輸送数量の回復を見込み8・5ポイントの改善予想だが、指数はマイナス25・0と「悪化」が「好転」を上回るマイナス水準から脱しきれない。
7-9月期は一般貨物、宅配貨物、特積貨物とも運賃・料金水準、輸送数量の指数が4-6月期を上回ったが総じて小幅にとどまった。
年末需要もあり例年10-12月期は上向く傾向だが、全体の予想指数マイナス25・0は直近では昨年10-12月期のマイナス25・8に近く横ばい。2年前の2021年10-12月期のマイナス21・0より低い。2017年10-12月期に指数2・2となってから6年プラスに浮上していない。
高止まりした燃料など輸送原価の上昇分に対し適切な転嫁が進んでいない。この状況が続く限り物量が回復してもとりわけ収益力の弱い小規模事業者の経営環境は明るくない。
大手、上場物流企業の4-9月期決算では、一定の価格転嫁、運賃収受は進むが、7-9月の物量が想定ほど回復せず総じて業績を落とした。3月期決算の上場物流企業76社のうち40社が減収・営業利益減益。物価上昇による消費の低迷、海上・航空貨物の運賃底這い状況など影響を受けた企業が軒並み悪化し通期予想の下方修正も相次いだ。
適正運賃収受の取り組みで単価は一定の上昇が見られるも、やはり燃料をはじめコスト上昇傾向が続き収益を圧迫した。
それでも通期予想は対前期比で上期より改善する。コロナ特需の剥離なども一巡することや物量の回復に適正運賃・料金収受の取り組みで収益確保に注力する。
帝国データバンクの10月調査では運輸・倉庫、一般貨物自動車運送ともに景気指数が3カ月ぶりに改善した。宅配大手の10月取扱い個数はヤマト運輸が9カ月ぶり、佐川急便は12カ月ぶりに前年プラスと営業日増もあるが荷動きは回復の兆しにある。
4-9月期決算では円安の追い風や値上げの浸透など好業績を上げた業界も多い。製造業では半導体不足の解消で自動車関連や値上げ転嫁が進んだ食品などは上振れ、好業績のすそ野は広がる。
燃料は政府の補助金で一定の成果はあるが先行き不透明である。サプライチェーンの要である物流がしっかり機能するようさらなる転嫁対策が求められる。