しわ寄せ防止の徹底を
働き方改革関連法の施行で、時間外労働の上限規制が適用された大企業からの〝しわ寄せ〟が懸念される中で、省庁が連携して対策に取り組んでいる。中小企業も来年4月からの上限規制に円滑に対応できるよう環境整備が望まれる。
厚生労働省、中小企業庁が今春、関係省庁との連名で1066団体に対し、下請事業者へ短納期発注など長時間労働につながる取引を配慮するよう文書を送付、会員企業への周知状況を報告するフォローアップ調査も行った。
そこから得られたしわ寄せへの声や、防止・改善につながった声など情報を共有し、集中的なしわ寄せ防止対策に取り組んでいる。
下請け事業者への無理な発注など、長時間労働につながる業界特有の商慣行や取引上の課題がある。それぞれ対策も講じられているが、業界の垣根を越え、成果となった事例の情報収集と周知・広報を行うことでより効果的な対策が可能となる。
商取引をめぐっては、依然として「親事業者の業務標準化で発注数量が予定を大幅に増えても納期を変えず、残業が発生」「親事業者の働き方改革実施で年末年始に発注が集中」などの声が寄せされており、中小企業の経営を圧迫している。
行政の要請は、長時間労働の取引慣行を見直し、短納期発注を抑制した納期の適正化や、発注内容の頻繁な変更の抑制、発注の平準化など配慮を求めるもの。団体の総会など大手企業の経営トップが集まる場においても直接要請していく。人手不足が深刻化する物流業界においても、より実効性あるしわ寄せ対策が期待される。
国は「中小企業・小規模事業者の活力向上のための関係省庁連絡会議」のもと、「下請等の取引条件改善」「最低賃金の引上げ」「長時間労働是正・再選性向上・人材確保」の3つのワーキンググループを設置している。しわ寄せ対策では長時間労働是正WGで検討を進め、省庁連携をさらに強化する方向である。
厳しい納品期限がある食品小売業界では、社会的問題となっている食品ロス削減へ商慣習の見直しが進んでいることなども同WGで取り上げられた。いわゆる3分の1ルールを見直した先進的事例が、ロス削減とともに、逼迫する物流現場への影響など広く情報を共有、発信することも求められる。
中小企業が働き方改革にしっかり取り組むためにも、現場の実態をとらえた、しわ寄せ防止対策を徹底する必要がある。