インフラとしての地位向上を
トラック運輸産業の2020春闘が本格化する。交通労連トラック部会は1月22日、運輸労連は1月29日にともに昨年と同額の賃上げ要求額「1万1000円中心」、率にして所定内賃金の4・5%とする方針を決めた。
トラック運輸産業が「労働時間が全産業平均より2割長く、賃金水準は全産業平均より2割低い」実態にあることから、このままでは人手不足に歯止めがかからず、「ものがあっても運ぶことができない」という物流危機に直面している。
両組織は同率・同額の要求とし、月例賃金にこだわって労働条件の底上げを行い、他産業との格差是正につなげる活動を強く進めていく。
運輸労連の難波淳介委員長は「19春闘は20数年振りの賃金改善数値が報告されたが、それが反映され労働力不足を補ったかと問われれば、入り口にようやく辿りついたに過ぎない」と慢性的なドライバー不足の解消には至っていない。それでも労働条件の改善へ着実に前進していることは確かだ。
国もこの間、改正貨物自動車運送事業法の施行、取引適正化の推進、ホワイト物流推進運動と支援体制を強化しており、まさしく働き方改革元年として入り口に立ったところ。これらの実効性の観点からも、2020春闘はトラック運輸産業の新たなステップへの起点になるといえる。
事業者は適正運賃収受に努め、企業業績にも寄与してきている。この流れを継続するとともにさらにスピードアップが望まれる。
一方で足元をみると、景況感は先行き懸念材料が多い。
日通総合研究所の19年10-12月「荷動き指数」はマイナス29まで落ち込んだ。景気後退時期に記録した13年1-3月のマイナス25より悪化し、底が見えない。
全国中央会による12月中小企業景況調査では、運輸業の景況DIもマイナス39・1と大きく落ち込んだ。10月の消費増税後に悪化したDI水準が継続し、さらに年末繁忙期の荷動きが低調。人手不足や燃料費動向など経営環境の悪化材料が重なっている。
それでも社会的インフラであるトラック運輸産業の地位向上への動きを止めることはできない。
2020春闘ではさらに賃金引上げ、労働条件改善を提起し、他産業並みの労働環境を整備するとともに、若い人材も集まる「魅力ある産業」が展望できるような流れをつくりたい。