ウイズコロナ見据え議論を
自動車運転者の改善基準告示見直しが2024年4月施行へ検討が進むが、新型コロナウイルスによる影響と社会変化をどう反映するかも議論の大きな焦点になる。
12日の労政審専門委員会では、秋に予定する実態調査の対象時期で各業態の意見が分かれた。労使代表者の近況報告で、コロナの影響によりトラックは売上2割減で〝曇り〟だが、ハイヤー・タクシー、バスは売上8割減で〝土砂降り〟――と深刻な実情が聞かれた。現場は調査どころではないというのが正直なところだろう。
トラックも品目によってはメーカーの生産停滞を直接的に受けており、今年度を対象とした調査は現実的に厳しい。輸送量が落ち込む中での調査は現実味がなく、ハイタクやバスが要望する調査対象を前年度としながら、必要なプラスアルファを来年度とする方向で進みそうだ。
事務局の厚生労働省は実態調査結果を踏まえた労使による十分な議論や、環境整備などを考慮し、告示改正を21年12月とする当初計画の延期には難色を示す。確かに国会の付帯決議でも早期の労使議論が要請されている。
しかしながら「ウイズコロナ状態の輸送形態が1年経てば見えてくるのでは」という、トラック業界の延期要望も、これからの自動車運転者の働き方を示す上で当然のことといえる。
オブザーバーで出席した国土交通省の石田勝利安全政策課長は、コロナ対策で従業員の健康管理など事業者が苦慮する様子と間近に接しながら「コロナで新たにとらなければならない項目もある。業務の在り方も変わり、何をどう調査するか深く考えないと項目は絞り切れない」と業界への理解を示す。現場の実態に即したものでなくてはならない。
秋の調査結果を来年3月に報告し、分科会で12月までに告示改正を議論する中で、社会変化を踏まえ、追加調査や検討を重ねる必要がある。
トラック運送業界は全体で物量が減少する一方、在宅需要の増加からEC物流の増勢が続く。人手不足にコロナ対策が重なり、置き配をはじめ事業者は様々な施策を打ち出し、新たな配送モデルの構築を模索している。
従業員の意識も変化し人との対面で多くの苦労や先行き不安が聞かれる。今まで通りの輸送形態には戻らない。そこからは改善基準告示で示される拘束、休息、運転時間の見方も変わるかもしれない。
ウイズコロナで働き方、運び方が変わる。これを念頭に置いた議論が望まれる。