コスト転嫁に物流の付加価値

日本ロジスティクスシステム協会(JILS)によると、各企業の物流コスト金額を売上高で除した「売上高物流コスト比率」は2024年度調査で5・45%となり、前年度より0・45ポイント増えた。全業種で比率が高まり、とくに卸売業、小売業が1ポイント超上昇している。24年問題への対応が求められる中で、サプライチェーン全体でコスト適正化の動きが進展しているようだ。
物流事業者からの値上げ要請などを理由に、売上高物流コスト比率は長期的な上昇傾向にあり、24年度は5・7%を記録した21年度調査に次ぐ高さだ。
ただ、今回の調査で同一サンプルによる前年度比較が可能な2年連続回答企業の売上高物流コスト比率は下降しており、業種別で上昇したのは卸売業のみ。物価高など荷主企業の売り上げの伸びが、物流コスト単価の上昇幅を上回った格好だ。
物流業界は引き続き燃料費の高止まりに人手不足の厳しい経営環境に置かれている。荷主交渉においてコスト上昇分の転嫁を確実に進めたい。
直近の12月は年末年始の活況な荷動きが反映され、12月分のWebKIT成約運賃指数は前月から8ポイント増「148」と過去最高を更新した。昨年8月に初の140台を記録してから高水準を維持し、例年ピークの12月でさらに伸長した。
一方、帝国データバンクの12月景気動向調査では、年末需要がプラス要因となったものの、ガソリン補助金の縮小や原油価格の高止まりなどで、運輸・倉庫業の景気DIは前月比微減。「ある程度値上げは進むが、それ以上のコスト増にある」と厳しい声が聞かれる。
運輸労連の成田幸隆委員長は7日に都内で開いた「新春交歓会」のあいさつで、24春闘の最終集計が加重平均8291円、単純平均5833円と30年ぶりの高水準となったが、連合の最終集計では、賃上げ平均額が1万5281円(5・1%)となっており「他産業と比較するとさらに格差は拡大しているのが実態」との見解を示す。
その上で、優秀な人材確保には、労務費を中心としたコストを適切に運賃・料金へ転嫁することとし、「物流には価値があることを私たち自身がしっかり再認識し、自信をもち、適正料金・運賃の収受に労使を挙げて取り組む」と強く呼び掛けた。
24年問題で物流、トラックへの社会の関心が高まり、国の施策をはじめ取引適正化への環境整備が進む中で、適正料金・運賃収受の流れをしっかりと継続させたい。