コールドチェーン物流への期待
日本とアセアン各国が、日本が提案していた「日アセアンコールドチェーン物流プロジェクト」を進めていくことを正式に承認した。
日本の質の高い低温物流の仕組みをアジア標準として広めていこうという取り組みだ。
アセアン各国は、経済発展に伴い、消費習慣や食生活が変化しつつあり、コールドチェーン物流に対する需要が高まっている。他方、アセアン各国の物流品質は安価だが粗悪で、食の安全性の低下、輸送段階での食料廃棄率の高さなど、健康面、経済面からも問題が少なくない。
このため、アセアン地域のコールドチェーン物流を担う物流事業者の冷蔵冷凍保管、輸送技術のレベルアップを図ることで、官民がこの地域で質の高いコールドチェーン物流を構築する必要がある。
アセアン各国は経済成長に伴う生活水準の向上により、食生活の多様化が進んでいる。とくに都市部では、冷蔵庫や電子レンジの普及が進み、冷凍食品などの消費が増えている。
温度管理が必要な食品の消費とそれらを運ぶ物流の需要は増えているが、現実の物流はそれに追いついていない。アセアン地域の物流品質向上に貢献するため、日本の農産物の輸出力強化に寄与するためも、高品質な日本のコールドチェーン物流を普及、展開していく必要があるのだ。
アセアンの物流は、質は悪いが値段は安い。日本の物流事業者が提供する物流サービスは、値段は少し高いが高付加価値だ。
日本の国土交通省は、コールドチェーン物流プロジェクトの中核に、ガイドラインの策定を掲げた。ガイドラインは、物流事業者向けと政府向けの両面から、それぞれが留意すべき事柄を盛り込み、その普及をめざすものだ。
例えばトラック輸送事業については、貨物が予冷されているかの確認や、トラック保冷庫に適した貨物の輸送、トラック保冷庫内の温度の記録などを求め、倉庫事業には、倉庫機能に適した貨物の保管、倉庫内の温度の記録などを定める予定だ。作業員の安全・衛生管理や事業者の法令遵守は当然だ。
ガイドラインには、アセアン各国がめざすべきコールドチェーン物流とは、一定以上の品質が担保されなければならないことを明確にし、日本の物流事業者が進出しやすい環境を整える狙いがあるのだ。
交通大臣会合で正式に承認され、いよいよ実行段階に入った、日アセアンコールドチェーン物流プロジェクトの実現に期待したい。