サプライチェーンの正常化を
緊急事態宣言の対象地域が拡大し、再び経済に打撃を与えそうだ。前回ほどの強い規制ではないが、景況の持ち直し傾向も明らかにブレーキがかかる。
新型コロナウイルスの感染再拡大により景況感は11、12月から下降局面が見られる。帝国データバンク(TDB)の12月調査では運輸・倉庫業界の景気DIが6カ月ぶりのマイナスとなった。その他を除く9業界の中で景気DIは最も低い。支援施策が一時停止された観光業の影響が大きいが、景況感を「悪い」とする企業が再び7割を超えている。
同調査では製造業の景気DIはプラスと引き続き持ち直しにあり荷動きも活発とするが、さらに緊急事態宣言を要望する地域が増え全国に広がればその影響度は増す。
休業・営業時間短縮などで、小売や個人向けサービスなど個人消費の下押しも懸念される。外食や小売の決算見通しも総じて厳しい。
一方で宅配事業は活況が続く。12月の実績でヤマト運輸が宅配便4商品の取扱い個数で前年同月比18・6%増、佐川急便は飛脚宅配便で12・4%増だった。いずれも最初の緊急事態宣言後の巣ごもり消費で拡大した6月(ヤマト18・7%増、佐川14・3%増)の伸びに近い。自粛が長期化すればさらにEC需要の拡大が予想される。
また、消費の落ち込みにより燃料関係の動きも注視されるところだ。
資源エネルギー庁によると軽油の店頭価格は12日時点で前週に比べ1㍑当たり0・4円高の117・0円、7週連続の値上げとなる。昨年3月30日に次ぐ117円台の高値水準だが、こちらも自粛制限によりどう変動するかで経営への影響も変わってくる。
TDBの調査では今後も一時的な後退が見込まれるものの、感染状況次第ながら春頃に底打ちした後、緩やかな上向き傾向で推移するとみている。数カ月スパンでは一時的な下降ととらえ、落ち込み幅を最小限にくいとめたい。
緊急事態宣言の発出は経済的な痛みも伴うものだが、問題はいかに早く回復するかにある。人流抑制と行動変容、そしてワクチンがスムーズに供給できる体制づくりが急がれる。
足元では飲食店等に供給する事業者のダメージも大きい。宅配の動向も含め業種により荷動きの状況は異なるが、事業者の対応も限界がある。
サプライチェーンが混乱を招かないよう、国も事前に是正すべき措置を講じてほしい。