サプライチェーン可視化へ
トラックの多重下請構造が実運送事業者の適正運賃・料金収受を妨げるとして、国の検討会が関係法令を参考に「運送体制台帳」の作成や、運送事業者間で契約内容の書面交付を義務化する素案を示した。運送体制の可視化が求められている。
「持続可能な物流の実現に向けた検討会」で行った多重構造の実態調査を踏まえたもの。検討会の中間取りまとめでは発着荷主・物流事業者に対し、省エネ法を参考に一定規模以上の事業者に物流改善計画の作成・提出・報告や、物流管理統括者の専任を置くなど方向性を示している。
今回も元請には建設業法を参考に下請運送事業者リスト(運送体制台帳)の作成を、運送事業者同士の契約では内航海運業法を参考に書面交付を義務付ける案を提示した。
実態調査ではトラック事業者の8割が他のトラック事業者の依頼を受け、その半数はさらに他の事業者へ委託、中小零細ほど3次請け以上の割合が高い傾向が分かった。トラック事業者間の契約では資本金が少ないほど書面化されていない割合も高い。コスト高の価格転嫁、適正運賃・料金収受が求められる中で、あらためて中小零細の下請事業者の厳しい実態も浮き彫りとなった。
荷主や利用運送へのヒアリングからも「下請が連なると細かい作業指示が通らない」、「帰り荷確保へ利用運送に委託し必然的に下請構造が発生」や、契約書面化では「突発的案件では都度書面化は難しい」、「単発案件では契約書を作成していない」といった実態も確認している。
物流波動への対応など多重下請の運送は発生する。その上で是正すべき点を洗い出す中で、常時どこで問題が起きているか、サプライチェーン全体の可視化が進む措置が望まれる。
建設業界ではゼネコンなど特定建設事業者が発注者から建設工事を請け負うと、下請契約の請負代金額が一定以上であると、下請負人の名称や工事の内容などを記載した「施工体制台帳」の作成が義務付けけられており、これを参考とした。
検討会は今夏までに最終とりまとめを行う。6月にも物流の緊急対策をまとめる政府の関係閣僚会議と包含関係だが、検討会座長の根本敏則敬愛大学教授は「最終取りまとめには目標年次も示し5年くらいで実現させたい」と述べている。
燃料やコスト高の転嫁など喫緊課題に追われるが、24年問題はしっかり事業者の意見を汲み取り実現可能な施策を講じてほしい。