モーダルシフトの進展実感
少子高齢化、人口減少に伴うトラックドライバー不足を背景に、貨物輸送をトラックから鉄道や海運に転換する「モーダルシフト」が急速に進んでおり、関係者は、その流れを実感している。
日本貨物鉄道(JR貨物)の2017年上半期(4―9月期)の輸送実績は、台風などの自然災害に見舞われたものの、全体の取扱貨物量は前年同期比3・3%増(コンテナ4%増/車扱1・3%増)だ。
とくにコンテナは、ドライバー不足を背景に鉄道シフトが進んでいる。積合せ貨物は6・8%増と高い伸びを示し、自動車部品も26・1%増、ビールの共同輸送など食料工業品は2・8%増と前年を上回った。
JR貨物では、ようやく現実的に輸送量として数値に表れてきた手応えを感じているようだ。荷主企業のトラックドライバー確保に対するひっ迫感から「それなら鉄道を使おう、という動きは商談においても感じており、業種を問わず相談を受けている」(JR貨物幹部)という。
モーダルシフトは、数年前まで停滞していた。国土交通省が2011年に荷主を対象にして行ったアンケート調査では、トラックで輸送している貨物のうち、鉄道輸送に切り替える対象となるのはわずか0・23%にとどまっていた。
当時、多くの荷主は「鉄道で運んでほしい荷物がない」と考え、「小口輸送に適していない」「急な出荷量の増減に対応できない」「トラックに比べ機動性がない」ことなどをその理由としてあげていた。
しかし、運びの仕組みを変えていくことはできる。北海道のビール輸送は、その最たるものだ。フォワーダー各社とのパートナーシップで小ロット荷物を集約するなど、ノウハウを生かした仕組み作りが求められている。
鉄道貨物輸送が追い風を受けている一方で、通運事業者は一抹の危惧を持っている。鉄道貨物は旅客との分担関係が変わらないことから、顧客がフェリーなど海運にシフトしているのだ。
JR貨物は、業務創造推進プロジェクトを立ち上げ、「10年先を展望し、5年後のあるべき姿を作る」――と題した中長期経営計画を策定。新たな輸送需要の創出に向け、2020年度を目途に東京貨物ターミナル駅に2棟の大型物流センターを建設する計画だ。東京港国際コンテナターミナルも至近で、都心から広域に広がる物流拠点となる。
鉄道ロジスティクス事業の収益拡大とともに、マルチテナント型物流施設の開発など、株式上場も視野に入れた経営戦略に期待がかかる。