ワクチン流通円滑化で安心を
首都圏1都3県で発令されている緊急事態宣言の延長により、飲食店など時短の影響が続く。一方で自粛による巣ごもり需要の再拡大も見られ、業種間の温度差が鮮明になっている。
帝国データバンク(TDB)の2月の景気動向調査では、運輸・倉庫業含む全10業界の景気DIが3カ月ぶりに前月比改善を示した。51 業種中41 業種が改善したものの、依然として業種間の開きがある。半導体関連や電子部品など製造業が回復基調だが、旅館・ホテルや飲食店など個人向けサービスは低水準である。
日本フードサービス協会がまとめた1月の外食産業市場売上高は、前年同月比21・0%減と緊急事態宣言による自粛が直撃した。大手百貨店4社の2月の既存店売上高(速報値)は前年同月比5-11%減。下げ幅は3割前後だった1月に比べると縮小したものの主力の衣料品の落ち込みが続いている。
巣ごもり需要の再拡大は各業界の統計からも明らかだ。ヤマト運輸の宅配便4商品の取扱個数は1月22・9%増、2月19・7%増と2割増ペース。日本電機工業会によると1月の白物家電の国内出荷額は20・7%増、1月単月では過去最高を更新した。また、1月の商業動態統計速報では家電大型専門店が11・4%増、ホームセンターが10・8%増と2ケタで推移する。
こうした業種間の温度差は足元の感染状況次第ともとれるが、低迷する業種の影響が長期化すればサプライチェーン全体にさらに打撃を与える。
希望は新型コロナウイルスのワクチン接種だ。スムーズに進めば個人消費の喚起、経済活動の正常化へと期待は大きい。
TDB調査による物流事業者からのコメントも「全世界でワクチン接種が始まれば荷動きは急速に回復」、「ワクチン接種に株価上昇も相まって物流も活発になると期待」など経済活動、荷動きに追い風とする声が聞かれる。
感染状況リスクを抱えながらも経済が回復するには、ワクチン接種が医療従事者を皮切りに国民に円滑、迅速に実施できることが明らかになることだ。
国はワクチンの配送を都道府県と協議しながら確実に実施することとしている。今後、高齢者や一般への接種が本格化すれば、各地域の二次配送やドライアイス、冷凍庫など必要な物資輸送でノウハウが求められる。物流事業者の果たす役割は大きい。
接種・流通体制の円滑化で社会に安心を与えてほしい。