下請構造の問題点 考える時期
国内企業の業績に陰りが見え始めた。国内個人消費の伸び悩みに加え、中国はじめ新興国経済の成長鈍化、英国のEU離脱問題などで円高・株安が進み、国内景気は停滞感が強まっている。
グローバルな日本企業の代表格であるトヨタの2017年3月期通期営業利益は、前期比43.9%減の1兆6000億円にまで落ち込むようだ。期首予想と比べても1000億円の下方修正となる。急速な円高が要因だ。
期首に1$=105円と見込んでいた為替レートを通期102円とし、7月以降は100円を前提とした。世界販売台数は据え置いたが、リスクは、資源国など新興国の低迷などだ。
一方、物流企業のトップ、日本通運は、2017年3月期通期の売上高を860億円下方修正した。企業収益の下ぶれによる荷動き低迷、中国をはじめとする新興国経済の成長鈍化、円高による為替の影響だ。
4-6月期も減収だが、営業利益は燃料費などの減少で増益となり、通期の営業利益見通しは据え置いた。国内売上比率の高い物流企業の場合、燃料コストの「小康状態」が利益面で貢献している。
東ト協連などによる7月分の軽油共同購入価格交渉も前月比2円下げで決着し、4ヵ月ぶりに値下げとなった。東ト協連カード価格(消費税抜き)で1l当たり78.9円となった模様で、比較的落ち着いた価格水準となっている。
波低しに見える物流業界だが、人手不足、ドライバー不足は依然深刻だ。全日本トラック協会の調査によれば、68%の事業者が必要な人材を確保できていないと答え、その影響として43%が「仕事を断ることがある」とし、36%が「ドライバーの時間外労働を増加させることがある」と答えている。
最近では、将来の労働力不足を見越して鉄道による共同輸送などに取り組む荷主企業も増えているが、対症療法的なものであり、根本解決とはいえない。
この問題の根本解決には、ドライバーの労働時間短縮や賃金の改善が必要であり、そのためには適正運賃・料金の収受が不可欠となる。国土交通省の藤井自動車局長は「適正な運賃・料金を収受できない原因の1つに、下請多層構造がある」との見解を示し、実態把握に意欲を示している。
日本経済の下請構造は、何もトラックに限った話ではない。そのどこに経済的な意義があり、あるいは無いのか。真剣に考えるべき時期にきているのかもしれない。