中小へのしわ寄せ回避を

新たな変異株の動きが懸念されるが、景況全般には緩やかな回復基調を持続している。
帝国データバンク(TDB)の11月景気動向調査によると、全体の景気DIは3カ月連続で改善した。自粛緩和が個人消費関連の景況感を押し上げ、一部では半導体不足の影響も和らぐなどプラス材料が増えた。
新規感染者数が落ち着き、今後は「リベンジ消費」や「挽回生産」が見込まれるという。感染状況は予断を許さない中でも、ウイズコロナ、アフターコロナの動きと顕在化してくる新たな商機をどうとらえるかしっかり注視したい。
TDBの11月調査では全51業種中24 業種でコロナ影響前の2020年1月を上回る水準まで回復した。既に半数近くがコロナ前に戻っている。運輸・倉庫業界もほぼこの水準に近い。
原油などの資源高や材料不足の影響による仕入単価、販売単価の上昇も継続要素だが、運輸・倉庫業界は燃料価格の高騰で仕入単価DIが2008年8月以来の水準に上昇する一方、販売単価DIは横ばい傾向。良い悪い判断目安となる50は超えているが、仕入れ上昇分と対比すると収益への影響が懸念される。
TDB調査で製造業をみると、仕入単価DIはやはり08年9月以来の水準に上昇したが、販売単価DIも「建材・家具、窯業・土石製品製造」や「電気機械製造」など3業種で過去最高となった。卸売業も「建材・家具、窯業・土石製品卸売」が木材や鋼材など材料価格の上昇が続く中、仕入単価、販売単価DIともに過去最高の水準を更新、価格転嫁が進んでいる。
建材・家具等は需要回復で末端消費が動く側面もあるが、メーカーや卸売業の製品値上げも後を絶たない。再値上げの表明も相次ぐ。原料高騰・材料不足のコスト増に対し自助努力に限界があり、さらにコンテナ不足など物流経費、そして環境対策費の上昇も背景にあるようだ。
こうした状況下、物流業界、とりわけ中小事業者へのしわ寄せは取引適正化への大きな流れと逆行する。
今月2日に全日本トラック協会など輸送3団体が燃料価格高騰に対する総決起大会を行い、中小零細が多くを占める業界では、燃料高騰やコロナ禍など外的リスクに対しても安定的に事業継続できるよう恒久的な制度づくりを強く要望した。
景気の回復基調、新たな需要を取り込む次なる成長局面においても、基盤インフラの物流がしっかり機能しなければ自律的な経済成長は見出せない。