交渉に動く、気運醸成を
3月は「価格交渉促進月間」。政府は2021年9月から、交渉が頻繁に行われる3月と9月において、発注側、受注側企業双方交渉を促すよう施策を講じている。燃料はじめコストの高止まりが続く中で、しっかりと交渉・転嫁が行われているか。フォローアップ調査結果の公表により、〝見える化〟が進んでいることも認識したい。
中小企業の賃上げを実現するにも、労務費、原材料費、エネルギーコストなどの上昇分を適切に価格転嫁できる環境整備が必要不可欠だ。価格交渉促進月間では、経済産業大臣名で下請中小企業振興法「振興基準」を踏まえ、受注側中小企業からの価格交渉の申し出に遅滞なく応じることや、価格転嫁に積極的に対応するよう要請している。
フォローアップ調査の規模・内容も拡充され、これらを通じ価格交渉の浸透・定着を図っている。
先の9月調査では、トラック運送業界が業界内での価格転嫁も進んでいない実態があらためて浮き彫りとなった。
今回の3月調査では受注側中小企業約30万社へのアンケートと、約2000社には下請Gメンによる重点的なヒアリングを実施。その結果から問題のある事例や事業所の公表、注意喚起を行う。
政府は交渉・転嫁の実践、フォローアップ調査や指導・助言による「実践と改善のサイクル」で、悪しき取引慣行を是正し、成長と分配の好循環に繋げることを描いている。公正取引委員会の緊急調査など一連の施策も含め、取引慣行是正の動きが広く周知されてきた。
中小・小規模が大半のトラック運送業界においても、荷主、元請とサプライチェーン全体で共存共栄を図り、付加価値の向上で収益を高める流れをつくらなければならない。
トラックの価格転嫁状況は依然厳しいが、帝国データバンク(TDB)の景況調査から、運輸・倉庫業の仕入れ・販売単価指数の推移を見ると、2月は販売単価DIが56・8と過去最高値を更新した。仕入単価DI68・4との差は11・6あるが、全体平均の12・0(仕入れ72・9/販売60・9)を下回っている。
運輸・倉庫業で仕入れ単価が最高値(75・0)となった昨年3月の販売単価との差は23・2あった。販売単価は緩やかながら上昇しており一定の価格転嫁は進んでいるようだ。
まだまだ正常化には至らないが、この交渉月間において、サプライチェーン全体で適正化、共存共栄を図る気運を醸成したい。