他産業との格差是正へ

トラック運輸産業の2019春闘が本格的にスタートする。交通労連トラック部会は1月23日、運輸労連が1月29日に賃上げ要求額「1万1000円中心」、率で4・5%とする春闘方針を決定した。

深刻化するドライバー不足により「このままでは『物流が止まる』ことが現実味を帯びている」との危機感が依然として聞かれる。

両組織は今春闘を、優れた人材を確保する観点から「これまで以上に月例賃金にこだわって労働条件の底上げ・底支えを進め、他産業との格差是正につなげる」ため、個別労使へ従来以上に踏み込んだ協議や議論を要請している。

今春闘では、大手企業組合の果たす役割が大きい。運輸労連の難波淳介委員長は、元請け各社が各グループ各社や協力会社など下請けとの取引適正化、長時間労働の改善に向けて「組織の壁を越えて、魅力ある運輸産業を目指し行動を起こす起点の年にしなければならない」と、元請け責任の重要性を指摘した。

トラック運送事業者数は、規制緩和前の1・5倍の6万社を超えている。その半数以上が保有台数10台以下事業者であり、その多くは元請け企業にグループ企業や協力会社などとして紐づけられている。

現在の物流システムは、この元請け―下請けの多層構造で支えられているといっても過言ではない。元請け各社には、グループ各社や協力会社との取引適正化、労働時間管理を視野に入れた対応や役割が求められている。

トラック運送事業が「労働時間が全産業平均で2割長く、賃金水準は全産業平均より2割低い」実態にあるのは承知している。だからこそ、この状態を変えるには「労働時間の長さに依存しない賃金体系の構築」=長時間労働を是正しても賃金水準が下がらない制度が必要だ。

そのための原資こそが、公正な競争による適正運賃・料金収受であることは言うまでもない。

昨年12月に成立した改正貨物自動車運送事業法は、労働環境改善の原資を得ることを目的としたものである。行政、事業者、労働組合が三位一体で取り組んだ大きな成果であり、新たなスタートでもある。

この改正事業法の趣旨を理解し、適正運賃収受に向け荷主と交渉して得られた原資を元に、賃金を含めたドライバーの労働環境を改善しなければ、法改正の意味がなくなる。

労働条件改善は、トラック運輸産業の健全な発展と経営改善にも最も重要な課題であることは、労使とも共通認識だ。他産業並みの労働条件の底上げを図りたい。