価値を創造する産業に
日本通運が、「AI」「IoT」「ロボット」などの新技術を応用した物流サービスの開発に本格的に取り組み始めた。
今年5月には専門組織「ロジスティクスエンジニアリング戦略室(略称LE戦略室)」が新たに設置された。すでに無人倉庫の開発、ドローンを活用した倉庫内作業、隊列走行と求車求荷システムの組合せなど、実用化に向けた研究・開発の検討が始まっているようだ。
LE戦略室は、物流に関する最先端技術を研究・開発する専門組織で、技術による物流効率化を通じて社会への貢献を果たそうというものだ。無人化、省力化などで新たなサービスを生み出し、新たな価値を創造する。業界では、労働力不足対策の切り札としての期待が高まる。
具体的な取り組みとしては、①自動運転を応用したトラック隊列走行②物流センターの自動化・無人化・省力化③AIを活用した物流ソリューションの調査研究④ドローンの多目的活用⑤トラックマッチング事業の5事業である。
トラック隊列走行は、国が2020年に高速道路上で実現し、22年の商業化をめざしている。日通では、この隊列走行に求車求荷システムをつなげることも検討している。
ウェブなどを活用したトラックと貨物のマッチングサービスを、協力会社や顧客などのニーズに合わせて広範囲に展開しようという考えだ。
AIによる物流ソリューションの研究調査では、現場で抱える課題解決や省力化など、AI、クラウド事業者と連携しシステム化。荷物、人、車両などのビッグデータを統計的に収集し、活用する。
同社では「第4次産業革命といわれる現在、物流業界も新技術を取り入れ、新たな価値を創造する産業へと転換する機会が訪れた」と新サービスの開発に力を入れる。
だが、運輸産業の現実は厳しい。政府の「働き方改革」で示されたトラック運送事業の時間外労働規制は、現行の改善基準告示と変わらない。しかも2019年の施行から5年間の猶予がついている。その頃には、すでにトラック隊列走行の商業化が実現しているはずだ。
物流現場では「働く産業が違うだけで、労働時間の上限が違うのはおかしい」という声が多い。経営者の中にも、今回の「年960時間」という上限規制には異論がある。
とにかく、人を集めるには、労働者の処遇を改善する必要がある。AI、IoT、ロボット、自動運転などの新技術をフル活用して、価値を創造する産業への転換を急ぐべきだ。