価値高めるプライシングを
ヤマトホールディングス、SGホールディングスが第3四半期決算発表で通期予想を下方修正した。いずれも今期3回目の下方修正で、主力の宅配事業の収入が想定を下回った。
昨年5月発表の期初予想と対比すると、ヤマトは売上高で減額950億円(5・1%減)、営業利益は半減の400億円、SGは売上高で800億円(5・8%減)、営業利益で165億円(15・7%減)の減額修正。それだけ需要低迷による物量の減少が影響した。
SGはロジスティクス事業の海外・航空貨物の物量減と運賃停滞が大きいが、今回の下方修正は第3四半期(10-12月)後半からの回復を見込んでいたデリバリー事業の業績が想定を下回ったことを踏まえたもの。
宅配はコロナ禍の巣ごもり需要でEC市場が急増した一方、今期はコロナ感染症の5類移行や、物価上昇による消費の買い控えもあり伸びが鈍化。2社は価格改定で平均単価は前年を上回るものの、とくに11・12月繁忙期における物量が想定を下回った。
EC市場そのものはコロナ禍で裾野は広がり引き続き需要増が見込めるが、外的要因による環境変化への対応の難しさもうかがえる。
ヤマトの今回の下方修正は売上高よりも利益の減額幅が大きい。24年問題に直面し委託単価の上昇とともに業務量が想定を下振れし、「需要低迷、繁閑差への対応」の課題を残した。発表した新年度からの中期経営計画では3カ年で宅配便は1・9億個、10%増を想定しながら付加価値創出で収益拡大を図る。先の課題には「業務量の繁閑・想定差を踏まえたプライシング戦略」を重点に取り組む考えだ。
4月からの宅配便届出運賃でSGは7%程度、ヤマトは一部サイズで2%の値上げを表明しており、これをベースに法人向け個別交渉を進めている。
物量の回復には現状厳しい見方が強く、収益力を維持・拡大するにも適正運賃・料金収受に粘り強く取り組むことだ。引き続き上昇するエネルギーや労務費の転嫁対策に懸命だが、安定供給を前提としながら想定できない需要の下振れリスクも含め、物流の提供価値を織り込んだ上での運賃適正化が望まれる。
物流事業者はコロナ禍で急増した宅配需要に対し当たり前のようにサービスを提供してきた。抱える様ざまなリスクへの理解も込め、物流の価値を高めるプライシングに注視したい。