個人消費の行方がカギ
帝国データバンク(TDB)の2月景気動向調査によると、運輸・倉庫の景気DIは2カ月連続で悪化した。物流関係者からは荷動きの悪さを危惧する声が聞かれる。
TDBの景気DIは50を境に上が「良い」、下が「悪い」を示す。運輸・倉庫の2月41・9は昨年3月(41・2)以来の低い水準だ。インバウンドが後押しした貸切バスや旅行業など旅客関係は改善した一方、貨物関係の物量の低迷が大きい。一般貨物自動車運送の景気DIは39・0で、昨年10月以来の30台に落ち込んだ。
価格転嫁の観点から運輸・倉庫の販売価格DIと仕入れ単価DIの推移をみると、販売価格は60近くを維持するが、仕入れ単価も70近い高止まりの状態にある。激変緩和措置が現状では4月末までとなっており燃料コストの懸念も高まる。さらに2024年問題に対して業界全体が不安を抱えていることも事業者のコメントからうかがえる。24年問題と燃料価格高騰という継続する不安要素がぬぐえないままだ。
直近は物量の低迷で売り上げも厳しい。運輸・倉庫の2月の売り上げDIは48・7となり景況感の下押し要因となっているようだ。
荷主側をみても、2月の製造業の景気DIは3カ月連続で悪化し21年5月以来2年9カ月ぶりに30台に低下した。価格転嫁交渉へ、国の施策、環境整備が進む中で荷動きの低迷がこれにブレーキをかけてしまう懸念もある。
景況感の先行きも不透明感が増す。TDBによると、2月は史上最高値の更新が続いた日経平均株価(証券・商品先物取引業の直近の景況感は65・3と高水準)など金融市場の安定に、インバウンド消費や半導体関連の設備投資需要などがプラス材料となったが、物価高騰に伴う消費者の節約志向の高まりや、製造業の停滞が悪材料となった。個人消費DIが43・1と2カ月連続で落ち込み、企業からも、消費者の低調な消費行動を危惧する声が多数あがっている。
今後も悪材料が集中して下振れるが、夏以降から賃上げなど個人消費を中心に緩やかに持ち直すとみている。それも雇用情勢の逼迫を背景とした継続的な賃上げや賞与、減税などによる個人消費の動向が大きく左右するだろう。
物量回復の観点からも個人消費の行方がカギとなりそうだ。やはり継続的な賃上げであり、そのためにも原資となる適正運賃・料金収受へ粘り強く取り組むことに尽きる。